2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03227
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
太田 寿明 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 基礎法学 / 法哲学 / 法理論史 / アダム・スミス / 『道徳感情論』 / 『法学講義』 / 自然法学 / 18世紀スコットランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀スコットランドの哲学者アダム・スミスが、『道徳感情論』および『法学講義』で展開した法学原理の構造と意義を、そのテキストと法学的文脈(コンテクスト)の双方を踏まえて総合的に解明することを目的としている。この目的を達成するために、平成30(2018)年度は以下3点の研究を実施した。
[1]平成29(2017)年度の成果を公表した。具体的には、東京法哲学研究会・関西法理学研究会合同研究合宿において報告「アダム・スミスの刑罰論――理論史的検討――」を行い、日本イギリス哲学会関西部会第59 回研究例会で報告「アダム・スミスと初期近代自然法論の伝統――刑罰論の比較――」を行った。さらに、これらの報告を基礎に、「アダム・スミスと初期近代自然法論の伝統――刑罰論の比較――」を『イギリス哲学研究』に投稿した。 [2]スミスの法学原理の特質を解明するために、彼の権利(right)概念に着目し、その中でもとくに所有権(property) 概念に関して、彼の理論の構造および特質を探究した。具体的には、①彼が権利(所有権)についていかなる理論を展開したのか(テクストの分析)、②権利(所有権)概念について、彼に影響を及ぼした学問的伝統ないし思潮がいかなるものであったのか(法学的コンテクストの分析)、③スミスの権利(所有権)論をその法学的コンテクストと比較したとき、両者はいかなる連続面と断絶面を有するのか(①②の知見の総合)の検討が中心となった。 [3]スミスと彼に影響した法学的コンテクスト(とくに初期近代の法理論家)との関係を明らかにするためには、両者が影響を受け、あるいは再解釈した古典古代の学説との比較が不可欠なのではないかとの見通しを立てた。そこで、両者に関わる限りで古典古代の学説を分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、①平成29年度の成果を公表し、②権利(所有権)概念に着目したスミスの法理論の分析を進めることで、その特質を一定程度解明し、かつ、一層の解明に向けての見通しを得ることができた。さらに、③古典古代の学説と比較することによって、スミスの法理論史上の位置づけをより具体的なかたちで探究することができた。以上の3点を理由として、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元(2019)年度は、①平成30年度の成果を学会発表および論文を通じて公表すること、②スミスの権利(所有権)論の特質についての探究を一層進めること、③スミスの権利(所有権)論の特質が彼の法理論全体においていかなる特質を与えているのかを追究することを目標とする。とくに②③に関しては、平成30年度に引き続き、研究対象として選択する法概念の通史的な理解を背景にスミスの理論の比較検討を進めるために、研究対象として選択する法概念に関し、概念史的な調査を進める。
|