2017 Fiscal Year Annual Research Report
社会階層とジェンダー―女性の階層的地位に着目して―
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17J03243
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
黒川 すみれ お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 社会階層 / ジェンダー / 職業キャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は女性の職業的地位の測定に関連したデータ分析を中心に行った。実施した分析課題は以下の3つである。 1.労働政策研究・研修機構が実施した「職業キャリアと働き方に関するアンケート」調査データを用いて、女性の職業キャリアを分析した。このデータは、調査対象者の中学卒業以降の職業情報(従業上の地位、職種、業種、企業規模、職場環境等)を月単位で収集しており、特に壮年期(35歳~44歳)の女性の職業キャリアや現在の働き方について詳細な分析が可能となっている。本研究では、系列データの類型を抽出するための手法である最適マッチング分析により、女性の職歴を類型化して職業キャリアの記述を行った。これにより、女性の雇用形態の継続/転換がどの職種で生じているのかを明らかにした。 2.女性の非正規雇用労働者のうち、現在不本意に非正規雇用で働く「不本意非正規」の実態を明らかにした。不本意非正規が多く辿ってきた職業キャリアとして、下層ホワイトカラー職種内での非正規転換を経験していたり、正規雇用のホワイトカラーから非正規雇用のブルーカラーへの転換を経験していることが挙げられる。正社員で働きたくても働けない女性を職業キャリアの視点から捉えたことで、女性の活躍を推進する法律や政策がカバーするべき対象者を具体的に描き出した。 3.女性の主観的階層的地位の説明要因として職業キャリアを投入した場合の有効性を検討した。女性の場合、本人の職業的地位変数を用いるときには、現職の従業上の地位や職種ではなく、職業キャリアを投入した方がモデルの適合度が高いことから、(1)女性の職業的地位には一時点の情報ではなくキャリアを考慮する必要性が示唆され、さらに(2)地位測定には就業を継続してきた女性と一定の無職期間を有する女性とを区別して行わなければならいことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に予定していた(1)最適マッチング分析による職業キャリアの変数作成と、(2)その詳細な記述的分析は終了し、地位測定モデルにおける職業キャリア変数の有効性も確認することができた。研究成果として論文の発表には至らなかったものの執筆中の論文がいくつかあり、分析の蓄積ができていることから、おおむね順調に進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度はデータ分析を中心に研究を行い、女性の階層的地位の測定を実証的に検討した。2018年度は分析結果をもとに論文の執筆や国際学会での発表を行い、さらに階層論とジェンダーの理論的接合に注力して研究をすすめる予定である。
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Research Products
(1 results)