2017 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of Damage Control Design for Braced Steel Structures Considering Axial Forces Act on Beams
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17J03340
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 敦詞 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 制振構造 / 損傷制御設計 / 地震災害 / 鉄骨梁 / ダンパー / 梁軸力 / H形鋼梁 / 塑性変形能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,制振構面において座屈拘束ブレースから変動軸力を受けるH形鋼梁を対象として,繰り返し載荷実験,有限要素解析を行った。載荷実験試験体としては,既往の試験体に加えて,材長の長い試験体,梁幅の小さい試験体を新たに追加した。その結果,梁の細長比が大きくなると,フランジ局部座屈発生後に横座屈との連成を生じ,従来の交番繰り返し軸力下における局部座屈崩壊型の梁を対象とした保有性能評価式が,連成座屈崩壊型の梁の性能を過大評価することが明らかになった。そこで,本研究では,エネルギー法に基づき梁軸力を考慮した修正一般化細長比を導出し,既往の幅厚比指標(修正Wf’)と修正一般化細長比の相関式として新たに保有性能評価指標(修正Λc)を構築した。その結果,修正Λcにより,梁の性能を梁断面,材長,作用軸力比によらず整理可能であることが明らかになった。そこで,新規保有性能評価指標を変数として梁の性能を高精度に予測可能な保有性能評価式を提案した。加えて,修正一般化細長比と幅厚比指標の比として,座屈モード判定指標(κ’)を構築し,梁が局部座屈,連成座屈,横座屈によって耐力低下する条件を提示した。 さらに,制振構面では,エネルギー吸収量が評価指標の一つであることから,圧縮軸力下を対象として既往のバウシンガー効果係数の評価式の適用性を検証した。その結果,連成座屈崩壊型H形鋼梁のバウシンガー効果係数は,サイクル数,累積無次元化載荷変位振幅を変数として,梁断面,材長,作用軸力比によらず評価できることが明らかになった。また,引張軸力下の履歴吸収エネルギーは,圧縮軸力下の履歴吸収量エネルギーと概ね等しいことから,全履歴吸収エネルギーは圧縮軸力時の履歴吸収エネルギーを2倍することで概ね求められた。 得られた研究成果は,2018年2月出版の日本建築学会構造系論文集に加えて,国内論文3編,国際学会1編に報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画として,制振構面を対象としたH形鋼梁の繰り返し載荷実験を行う予定であったが,当初の計画通り所定の試験体パラメータを完了しており,座屈モードが梁の性能に与える影響を精査するのに十分な結果を得られている。また,得られた実験結果を基にして,軸力の作用方法や材料特性を複合硬化則を適用しながら緻密にキャリブレーションし,十分妥当な数値解析モデルを構築できた。そこで,構築した数値解析モデルを適用して,実験では網羅できないウェブ厚,フランジ厚,フランジ幅,材長のパラメータを補完するとともに,面外変形など実験的には十分把握できない挙動についてデータを蓄積した。 得られた実験結果,解析結果を従来の幅厚比指標により適切に評価することが困難であったことから,本研究では新規に軸力を考慮した幅厚比と細長比の相関式として保有性能評価指標を導出し,梁の性能を梁断面,材長,作用軸力比によらず評価可能とした。加えて,新規保有性能評価指標を変数とした保有性能評価式により,梁の最大耐力比,塑性変形能力,累積塑性変形能力を高精度で予測可能とした。 一方で,これらの性能は一方向載荷を対象としたものであるが,地震時に梁は繰り返し振幅を受けるため,エネルギー吸収性能を解明することが重要となる。本研究では,交番繰り返し軸力下で連成座屈崩壊するH形鋼梁に対する既往のバウシンガー効果係数の評価式の適用性を検証し,サイクル数,累積無次元化載荷振幅によりバウシンガー効果係数を適切に把握できることを示した。また,圧縮軸力下の履歴吸収エネルギーは,引張軸力下の履歴吸収エネルギー量と概ね等しいこと明らかにした。本年度の成果により,交番繰り返し軸力下の梁の繰り返し応力下における性能を高精度に把握可能としたことに加えて,審査付き論文に対してその成果を発表していることから,おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までは,純鉄骨梁を対象として性能評価を行ってきたが,通常建物における梁は,上フランジ側に頭付きスタッド(以降,スタッド)が配置され,コンクリートスラブ(以降,スラブ)が取りつく合成梁となる。そのため,梁の中立軸が上部に移動し,下フランジ側の歪が増大することで,局部座屈が励起される可能性がある。そのため,梁端付近における座屈性状を把握するためには,床スラブとの合成効果を適切に把握し,下フランジの応力状態を明らかにする必要がある。 一般に,スタッド-スラブ系の力学性状は,標準押し抜き試験により定められている。また,国内外に設計指針では,標準押し抜き試験結果と基にして,スタッド-スラブ系の最大せん断耐力,荷重-ずれ変位関係が定式化されている。しかし,標準押し抜き試験体は,スラブに作用する応力として圧縮応力のみを想定している一方で,鉄骨梁に圧縮軸力が作用する負曲げ時には,スラブには引張応力が作用する。そのため,地震時に圧縮・引張の繰り返し応力を受ける実構造物におけるスタッド-スラブ系の力学性状は,従来の押し抜き試験より得られる結果と異なる可能性がある。 そこで,今年度は,スラブに圧縮・引張の繰り返し応力を作用させる合成梁要素試験体を構築し,繰り返し載荷実験,有限要素解析を行う予定である。特に,スラブに引張応力が作用する負曲げ時において,スタッド,コンクリート,鉄筋の応力伝達機構を解明し,スタッド-スラブ系における合成効果の適切な把握を試みる。また,得られた結果を,現行の設計指針の評価式と比較し,合成梁要素試験体に対する適用性を検証する予定である。加えて,適用性が確認できない場合,最大せん断耐力,変形能力について新たに定式化を行う。 さらに,得られた合成梁要素試験体の結果を基に,スラブ付き制振架構に対する有限要素解析を行い,梁の塑性変形能力に対するスラブの寄与を把握する予定である。
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Research Products
(9 results)