2018 Fiscal Year Annual Research Report
Metabolic dysregulation in myelodysplastic syndromes
Project/Area Number |
17J03386
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 聖美 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 代謝異常 / IDH / 骨髄異形成症候群 / 急性骨髄性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究結果から、IDH変異阻害剤による治療前のPGC1aの発現の高低と臨床予後との有意な相関は見られないことが判明したため、PGC1a関連遺伝子に限らず網羅的にゲノム・エピゲノム解析を行う方針とし、IDH変異阻害剤による治療を受けた急性骨髄性白血病36例と骨髄異形成症候群3例から採取した合計146サンプルを解析した。IDH変異阻害剤奏効例においては、薬剤投与により治療前の高メチル化状態が解消されることが示された。脱メチル化されたプロモーターCpG領域のmotif enrichment analysisにより、PU.1やCEBP関連遺伝子のターゲット遺伝子のDNAモチーフ配列がIDHiの投与により脱メチル化され、その結果奏功時にはこれらの遺伝子発現が優位に上昇していることが確認された。再発時にはこれらの遺伝子群の発現は抑制される一方で、メチル化の再上昇は認められず、分化誘導に関わる遺伝子群の発現の抑制はメチル化とは独立した分子機構によりもたらされることが示唆された。治療前と再発時のペア検体の解析したところ、治療前検体ではDNMT3A, SRSF2, ASXL1, RUNX1の変異を高頻度に認め、RUNX1変異陽性例では完全寛解達成率が優位に低かった。一方、再発時にはBCOR/BCORL1, CEBPA, RUNX1, NRAS, KRAS, PTPN11に 変異を高頻度に獲得することが示された。また、reciprocal IDH mutationの獲得を1症例において認めた。治療前に存在したIDH1あるいはIDH2に対するsecondary mutationの獲得は見られなかった。メチル化と遺伝子変異及び発現プロファイリングのデータに基づき、IDH変異阻害剤への耐性獲得メカニズムは多様であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア代謝異常に着眼点をおいた解析から視点を変えて、より包括的・網羅的にゲノム・エピゲノム解析を行ったことで、当初予測していなかった興味深いデータが得られた。 治療前のRUNX1遺伝子変異の有無がIDH変異阻害剤の奏功の有無と相関するというデータが得られ、臨床的にも意義深い結果が得られたと考える。治療前に見られた高メチル化状態は薬剤投与後の奏功時には一旦解消されるものの、再発時には必ずしも再上昇するとは限らないことから、メチル化の状態は再発予測のサロゲートマーカーにはならないと考えられる。初発時AMLを対象としてIDH変異阻害剤と寛解導入化学療法(NCT02632708)あるいはメチル化阻害剤(NCT02677922)を併せて投与するレジメンの臨床試験が行われているが、これらの臨床試験の結果と本研究の成果を併せて、どのようなゲノム・エピゲノム異常を持つサブグループにどのcombination therapyを投与すれば高い奏効率が得られるかを予測できる可能性があり、造血器腫瘍の病態解明および治療成績向上に貢献することが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
IDH分化症候群のメカニズムの解析およびIDH変異阻害剤再発マウスモデルの樹立 IDH変異阻害剤による治療を受けた症例の一部で分化症候群を発症することが知られている。同様の病態はレチノイン酸により加療された急性前骨髄性白血病およびFLT3阻害剤で治療されたFLT3陽性AMLにおいても認められ、特定の遺伝子変異を持つAMLのサブグループにおいて分化誘導関連遺伝子が発現異常を起こした結果の病態と推測される。分化症候群発症と再発リスクおよび予後に関連が見られるか、また分化症候群発症の有無を治療前のゲノム・エピゲノム情報から予測することができるかを解析する。本年度の研究からIDH変異阻害剤の耐性メカニズは多様であることが示されたため、再発時の獲得遺伝子変異として高頻度に見られたRAS変異を導入したIDH変異マウスモデルを樹立し、より詳細な解析を行い耐性メカニズム解明に取り組む。
|
Research Products
(10 results)