2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03401
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐草 智久 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 家政婦 / 家事労働 / 在宅高齢者 / 高齢者福祉政策 / 本土復帰前沖縄 / 女性労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度の研究計画は、 1、訪問介護サービスの福祉ニーズの変遷について、全国各地方の図書館や公文書館での文献資料収集、行政サービスや実施主体の関係者・担い手へのインタビュー調査をとおして明らかにすること、 これが完了次第、2、同様に家政婦サービスの調査にも着手することであった。 1、については北海道札幌市・沖縄県を中心に調査を実施、それぞれ国内学会にて発表を行った。札幌や本土復帰前沖縄の訪問介護サービスの成り立ちについて明らかにしたその成果は、戦後日本の在宅福祉政策の歴史が、法制度の変遷のみでは回収できない、地域間による独自性・個別性を有していることを実証するものであり、またこれまで省みられてこなかった地域での展開に光を当てた点に於いて、地域史研究としての意義も大きい。なお札幌市にについては首都大学東京南大沢キャンパスにて開催された日本社会福祉学会秋期大会にて、沖縄については東京大学本郷キャンパスに開催された日本社会学会大会に、それぞれて口頭発表を行いその成果を発表した。 2、については家政婦サービス関しては紹介所や組合の成り立ちを中心に、業界全体の歴史について膨大な資料、データを入手した。その結果、業界全体の歴史的展開を俯瞰できた。そもそも、家政婦紹介所に焦点を当てたこの職業に関する体系的な歴史研究は、これまで十分に為されてこなかった。したがってこの研究は、いわば「盲点」であり、家事労働研究、女性史研究、ジェンダー研究など他分野にわたって、その学術的意義は図り知れない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、全国各地方の図書館や公文書館での文献資料収集、行政サービスや実施主体の関係者・担い手へのインタビュー調査をとおして、1、訪問介護サービスの福祉ニーズの変遷、2、家政婦サービスのニーズの変遷について、通年に亘って精力的な調査を敢行した。 1、については北海道札幌市・沖縄県を中心に調査を実施、国内学会にて発表を行った。札幌市については家庭奉仕員が市職員の労働運動の中心的存在となり、待遇改善が図られていったこと、事業の展開にあたって民間活力も積極的に活用していたことなどが判明した。このように当市の独自性が明らかにしたことで、「後発地域」の研究意義を示した。また、沖縄県は本土復帰前を中心に在宅高齢者福祉政策の展開について調査を進めた結果、当時の沖縄の高齢者福祉政策は在宅サービスが中心であることが明らかになった。 2、については、家政婦紹介所へのインタビュー調査、資料調査を実施した。まず業界団体に調査を依頼し、記念誌、総会資料などを入手した。その結果、業界全体の歴史的展開を俯瞰できた。収集した資料からは病院付添と在宅派遣の割合、在宅の場合は住込・通勤の割合など、地域間によってその実態に差違があることが判明した。団体に紹介を依頼し、各地域での家政婦紹介所にインタビュー調査を実施した。その結果、かつて介護保険制度が実施される以前は出稼ぎや季節労働の手段として家政婦の職が利用されていたことが明らかになり、家政婦紹介所を媒介に地方から都市部への女性の家事労働力・ケア労働力の広域間移動がなされていたことが示された。 以上、当年度は当初の計画通り調査を中心に資料・データの収集に充て貴重な資料・データの収集に成功した。その結果,翌年度に予定していた博士論文執筆に向けて、大きな足がかりを築くことができた。よって当年度の研究進捗状況について、「当初の計画以上の進展があった」と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでどおり調査・資料収集を継続して行っていくが、次年度はこれまでの調査で得た成果発表を中心に据えて研究活動を続けていく。 当初の予定どおり、家政婦サービスについての調査をすすめ精力的な聞き取り調査、資料収集を敢行する。 特に東北や北海道など、これまで訪問介護サービスの研究にて調査対象値に設定してきた、都市部でない地域の家政婦紹介所に調査を依頼し聞き取り調査を実施する。それによって、訪問介護サービスの歴史の類型によって、家政婦サービスの歴史にも一定の法則性・類型化が見いだせるのか解明していきたい。 並行して、今年度実施した調査の分析結果について学会発表や論文執筆を進めていき、博士論文の執筆・提出に繋げていく。
|
Research Products
(4 results)