2017 Fiscal Year Annual Research Report
病原細菌のⅢ型分泌機構を特異的阻害するAurodox類の全合成と構造活性相関研究
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17J03404
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Research Institution | Kitasato University |
Research Fellow |
渡邊 彰人 北里大学, 感染制御科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 全合成 / 構造活性相関 / 抗感染症治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、in vivo試験、in vitro試験において高活性且つ、高選択的な結果を示した、共存薬Aurodoxの新規全合成経路の確立及び、構造活性相関の解明並びに、新規誘導体合成を行うことで、Aurodoxをリードとした新規抗感染症薬創製を最終目標としている。 初年度の研究計画書では、標的化合物であるAurodoxの効率的な全合成に行うため、まず初めに多くの天然物が有している代表的な骨格を含む3つのフラグメントに分割し、それぞれのフラグメントの合成を行うこととしている。 実際に、ピリドン骨格部位は、安価で容易に購入可能な市販の原料から、保護基の着脱、増炭反応を行い側鎖の伸長を行った。また、Aurodoxは多くの共役した二重結合をを含んでおり、その二重結合を望みの構造にすることがカギとなる。そこで、その部分を含むフラグメントの合成の解決方法として有機化学合成において多く用いられる、二重結合を選択的に構築することのできるウィッテヒ反応を利用することで、望みの構造を有する二重結合の構築を達成した。さらにこの手法で用いられる試薬を変更することで、自在に二重結合の構造をコントロールすることが出来るため、様々な誘導体の合成を行うことが可能となり、その構築した構造を活性評価を行うことで高活性な化合物の探索を行うことが出来るため、この点は重要だと考えられる。 本年度では、すべてのフラグメントの合成は行えなかったが、1つのフラグメントの合成及び合成中間体の構築を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では、Aurodoxの効率的な全合成を行うため、3つに分割したフラグメントの合成に着手している。しかしながら、3つの設定したフラグメントの合成においてやや遅れを生じているのが現状である。理由として、効率的且つ量的供給を目指した合成戦略を設計しているが、分子間カップリングの収率や、いくつかの水酸基を含む基質の保護に対する位置選択性など多くの問題点があることから、それら問題点の解決法に時間がかかってしまっている。さらに、天然物の半合成から得られた知見から、アルコール溶媒中での分解や、いくつかの共役したオレフィンの光による異性化などが得られている。そのことから、用いる反応の最適条件を見出すことが困難であることが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、初めに、Aurodoxの全合成に向け、分割した3つのフラグメントの効率的且つ量的供給を目指した合成経路を確立する。その際、天然物の情報より、アセタール部位はアルコールなどの求核種に対して容易に求核化攻撃を受けることが示唆されたため、合成最終段階において構築する経路を立てた。しかし天然物は多くの水酸基を有しているため、合成途中において望まない環の構築が起こる可能性がある。そこで、どのような変換において鎖状骨格を維持し、最終段階においてアセタール構築をするかが鍵となるため、この部位の構築において、ホーナー・ワドワーズ・エモンズ反応より増炭後、エステル還元を行い、形成したアリルアルコール部位のシャープレス不斉エポキシ化を用いた、立体選択的なエポキシド形成により鎖状骨格の自由度を減少させ、アセタール環形成を抑制できると考えた。更に、形成したエポキシドを利用することで、所望の位置に立体選択的な水酸基の導入が行えると考えている。合成した各フラグメントはスティルカップリングとアミド縮合を用いることで収束的に連結させ、フラン環ユニットは所属研究室による天然物の全合成研究結果の末見出された、1,6-Oxa-Michael反応を用いることで立体選択的且つ、容易に合成できると考えた。また、合成したフラグメントを順次連結させることで、Aurodoxの全合成を達成していく。さらに、合成を完了した各フラグメントの活性評価を行うことで、ファーマコフォアを把握する。このことより、高活性を示したフラグメントに対して、化学修飾により様々な誘導体を合成していき、共同研究者と連携した活性評価による構造活性相関の解明を行う。
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