2018 Fiscal Year Annual Research Report
集団全体の寛容性が社会的学習に及ぼす影響についての実験的検証
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17J03435
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
貝ヶ石 優 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 社会的学習 / 寛容性 / ニホンザル / 地域差 |
Outline of Annual Research Achievements |
・2018年1-3月にかけて行った社会的学習実験の結果の分析を行った。まず、モデル個体以外の個体が初めて装置を開けるときに用いた方法、および実験中に用いられた全ての方法を分析した結果、予測とは異なりSlideよりもLiftの方がより多く用いられていた。しかし同様の分析をセッションごとに行った結果、実験の初期段階 (1,2セッション目) ではLiftよりもSlideが多く用いられており、実験が進むにつれてLiftが用いられる頻度が高くなっていた。さらに、ロジスティック回帰分析の結果、モデル個体を除く各個体が初めて装置を開ける時に用いた方法は、それまでにその個体がより多く観察した方法に影響を受けていた。すなわち、事前にSlideを多く観察していた個体は自ら装置を開ける際にSlideを用いやすく、Liftを多く観察していた個体はLiftを用いやすかった。以上の結果から、ニホンザルにおいて観察学習による行動の個体間伝播が起こり得ることが初めて示唆された。 ・オナガザル亜科に属する霊長類の多くでは、成体メス間の順位は血縁関係のある個体の順位に大きく影響されることが知られている。特に専制的で血縁びいきの強い社会構造を持つニホンザルやアカゲザルでは、(1)娘は母親の順位を受け継ぐ (2)娘は母親よりも低順位である (3)妹は姉よりも順位が高くなる、という原則 (川村の原則) が広く成り立つ。 他方、ニホンザルと近縁であるが、より寛容性が高く血縁びいきが弱いとされる種では、成体メス間に川村の法則から外れた順位関係が見られやすい。淡路島集団の成体メス間で2015年-2019年までに記録された優劣交渉を分析した結果、この集団では、川村の原則に従わない順位関係が多数見られた。このことはこの集団の個体が、一般的なニホンザルとは異なる、寛容型マカクに近い社会構造を有していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には前年度に実施した実験の分析を行い、淡路島ニホンザル集団において観察学習によって個体間の行動伝播が起こることを示した。この成果は第78回日本動物心理学会において発表された。また、淡路島ニホンザル集団の成体メス間の優劣交渉を記録、分析し、この集団において一般的なニホンザルとは異なる順位構造が見られることを明らかにした。これはこの集団の寛容性がニホンザルとしては特異的に高いことを示唆する新たな証拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
淡路島集団において行動観察データをさらに収集し、この集団の攻撃性について分析する。これまでの研究によって得られた成果の学会発表および雑誌論文の執筆、投稿を行い2019年度中の出版を目指す。
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Research Products
(4 results)