2017 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における探索行動の教育的意義と可能性―楽器とのかかわりに着目して―
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17J03491
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
伊原 小百合 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 幼児 / 探索 / 楽器 / 音 / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、楽器とかかわる幼児の縦断的な観察を通して、幼児期に楽器と探索的にかかわる経験の意義を明らかにするものである。幼児期には主体的に環境を探索することが尊重され、そうした経験の重要性については保育や教育に携わる者に広く認識されているが、近年では科学的にもその重要性が実証されつつある。本研究はそうした近年の研究動向に示唆を得て、本研究は探索的な経験と音楽的な学びとを連続的に捉える視点の提示を目指す。 本年は協力園でのフィールドワークを継続し、幼児が自由に楽器とかかわることのできる環境を設定して観察をおこなった。行動を分析する観点を確立し、それに基づいた全38回の行動記録を対象児ごとに作成した。縦断的な分析の対象として幼児2名を抽出し、対象児が年少児から年長児になるまでの変化の全体像を捉えた。分析観点は学会発表(うち1件は国際学会)を通してその妥当性について検討を重ねた。データには定性的検討を加え、音に関する幼児の経験がどのように深まっていくのか、対象児ごとの道筋を縦断的に明らかにした。また「太鼓を手で叩く」というプリミティブな音楽行為に焦点化し、特定の行為がどのように変化するのかを分析した(途中経過を学会誌に投稿・掲載済)。これに加え、生態学や身体性認知科学をはじめとする隣接諸分野の近年の動向と音楽教育学との関連について整理した(現在査読中)。現在、得られた結果を博士論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、現在、幼児期における探索行動の音楽学習への貢献可能性についての基礎的知見を博士論文としてまとめている。これまでの結果から、幼児は楽器とかかわりながら自己と楽器との関係性を安定させ、音への関心を深めていることが分かった。楽器を遊び道具の一つと位置づけ、幼児の探索的な経験から音楽的な学びを捉えたことで、幼児期に探索的に環境とかかわることの意義の一端が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた基礎的知見を基に、探索的な経験と音楽的な学びとの関連を多角的に明らかにする。例として、分析の対象とする幼児を増やし、学びの道筋を比較・検討することや、隣接諸科学の知見をより直接的に応用し、幼児期の音楽的な学びを更に解明すること等が考えられる。またこれまでの結果を通じ、幼児の主体的な環境構成を担保するためには楽器の選択や配置が重要となることが明らかとなり、今後はこうした知見を保育現場に積極的に導入しながら観察を継続することで、幼児期の探索を深める要因が明らかになると考える。
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Research Products
(4 results)