2017 Fiscal Year Annual Research Report
Composer as Interpreter: From the Transition of Conducting from 19th to 20th Century
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17J03577
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
内藤 眞帆 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽学 / ドイツ / オーストリア / 管弦楽法 / マーラー / ワーグナー / 西洋音楽史 / 指揮者 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、グスタフ・マーラーの管弦楽曲の主要な一次資料の収集およびの初期交響曲の成立過程の調査を中心に行った。夏季休暇中には、主にオーストリア・ウィーンのオーストリア国立図書館やウィーン市庁舎図書館などにおいて、マーラーの全交響曲とオーケストラ歌曲にまつわる、閲覧可能な手稿譜、筆写譜、出版譜の調査を行った。いずれの資料も先行研究において繰り返し論じられてきた資料であるが、それぞれの比較分析においては未だ研究の余地が残されていることが、実際の一次資料の閲覧を通じて判明した。 研究成果にかんしては、2回の学会発表を行ったほか、論文を1篇発表した。1回目の学会発表では、修士論文で扱ったマーラー〈第4交響曲〉の自筆総譜成立以後の修正作業について、作曲者自身の書き込みを含む複数の資料の比較検討をつうじて、マーラーの修正には様々な次元が存在し、時期により傾向が異なることを示した。2回目は、マーラーの初期交響曲のうち、〈第1交響曲〉と〈第2交響曲〉に焦点をあて、この2つの交響曲にまつわる自筆総譜および筆写総譜の比較検討や、創作時期におけるマーラーの指揮活動の考察から、〈第2交響曲〉の管弦楽法の特徴および指揮活動との関連を解明した。論文では、指揮者としてのマーラーの活動にかんして、テンポ、休止、オーケストレーションの変更といった3点を考察対象とし、彼の使用した楽譜資料や彼にまつわる言説の考察に留まらず、19世紀後半の2人の指揮者、リヒャルト・ワーグナーとハンス・フォン・ビューローの楽曲解釈と比較検討した。その結果として、マーラーが19世紀後半のドイツ語圏における指揮者の楽曲解釈のさまざまな特徴を受け継いでいることのみならず、マーラー独自の楽曲解釈についても明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査にかんしては、夏季休暇中にヨーロッパにおいて研究上必要となるほぼ全ての一次資料を入手・整理した点で、進捗状況はおおむね順調であると考えられる。その一方で、それらの資料の分析・考察にかんしては、引き続き入念に行う必要がある。 マーラーの指揮者としての活動については、すでに、ハンブルク時代に行われた約800回の上演にかんしてはデータ化の作業を終えた。しかし、それらのオペラに関して、先行研究の読解を基本に据えつつ、管弦楽法の特徴について考察を行うことは、次年度以降の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の第一の課題は、初年度におこなった夏季休暇中に行った一次資料の調査により浮上した、それらの綿密な整理・分析・考察である。これに伴い、当初の計画で調査対象とする時代を全て扱うことが時間的に困難となったため、今後はマーラーの管弦楽曲、とりわけ初期交響曲に対象を絞って研究を進める。具体的には、彼が創作過程をつうじて行った管弦楽法の修正に焦点をあて、自筆総譜成立以後の修正入り資料も含めて考察を行うことで、マーラーの管弦楽法の特徴およびその変化を複眼的かつ網羅的に明らかにするとともに、彼の創作過程における修正作業の重要性を問い直す。同時に、マーラーの管弦楽法は、彼が指揮したオーケストラの楽器の特徴や、過去の楽曲の管弦楽法並びにそれらに彼が加えた変更と密接な関係を有するため、彼の指揮活動も極めて重要な分析、考察対象とする。 また、年度後半はドイツに渡り、同地の研究者の指導のもとで研究及び博士論文執筆をすすめる予定である。
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