2017 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ胚盤胞期胚分化において割球の位置関係が果たす役割
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17J03585
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
郡 七海 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 胚盤胞期 / ウシ初期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の初期胚では胚盤胞形成時に胞胚腔という腔所を形成し、将来、主に胎子を形成する内部細胞塊 (Inner cell mass; ICM) および胎盤を形成する栄養外胚葉 (Trophectoderm; TE) への分化が起こる。この分化モデルの一例として、胚の立体構造の上で内側に位置する割球がICMに、外側に位置する割球がTEに分化するという内外モデルが提唱されている。さらに、このモデルの分子的メカニズムとしてHippoシグナルの関与が考えられている。本研究の目的は、ウシ胚盤胞期胚における単離ICMを培養することで胚の立体構造における内外の位置関係を人為的に変化させ、TEを再生するかどうか、およびその分子メカニズムとしてHippoシグナルが関与するかどうかを検討することである。今年度の実施した最初の試験では、TEマーカーであるCDX2、およびその発現を制御するHippoシグナル構成因子であるYAP/TEAD4各タンパク質のウシ初期胚発生各ステージにおける発現動態を免疫染色により調べた。その結果、ウシ初期胚ではマウス初期胚と同様にHippoシグナルが胚盤胞期における分化に関与していると考えられた。次に、ICM培養24時間後において、YAP/CDX2およびYAP/TEAD4がそれぞれ核内で共局在していることが観察された。さらに、ウシ線維芽細胞を用いてYAP/TEAD4の発現をウエスタンブロッティングにより検出した。次年度では、免疫沈降によりこれらの複合体形成の検証を行う予定である。最近、YAPの局在を変化させる阻害剤を用いた実験がマウス初期胚で報告された。現在、ウシ初期胚培養培地に添加して濃度検討を行っており、次年度には処理時間についても検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度には当初予定に加え、培養中におけるタンパク質発現の経時的な変化を調べることができた。TEマーカーであるCDX2、およびその発現を制御するHippoシグナル構成因子であるYAP/TEAD4各タンパク質のウシ初期胚発生各ステージにおける発現動態を免疫染色により調べた。この成果は、2017年7月13日~16日にかけて米国で開催されたSociety for the study of reproduction (SSR) 50th Annual Meetingにおいて発表された。次に、ICM培養中において経時的なCDX2陽性細胞数の変化を観察し、総細胞数に対するCDX2陽性細胞数の割合は培養12時間以降で単離前の胚盤胞と同程度まで増加することを見出した。さらに、ICM培養中において経時的なYAP/CDX2陽性細胞数の変化を観察し、CDX2陽性細胞の再出現に先行して核内にYAPが強く検出される細胞が認められた。ウシ線維芽細胞を用いてウエスタンブロッティングを行った結果、YAP/TEAD4タンパク質の発現が認められたことから、免疫沈降を行うに当たって必要なデータが得られた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ウシにおいてYAP/TEAD4の複合体形成の確認を行うために免疫沈降を実施する。阻害剤については添加時間について検討するとともに、阻害効果の可塑性についても検証していく予定である。阻害剤の効果に関する検証を行った後に単離ICMの培養培地に添加することでYAP/CDX2発現への影響を検証していく。単離ICMを培養した際のICMマーカータンパク質の発現についても検討していく。
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Research Products
(1 results)