2017 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロニウムによるボース・アインシュタイン凝縮の実現
Project/Area Number |
17J03691
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周 健治 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 反物質 / ポジトロニウム / 冷却原子 / レーザー / 微細加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に3つの進展があった。 1. 低温環境下でのポジトロニウム熱化過程測定。ポジトロニウムを冷却する重要な過程となる,低温環境下で運動エネルギーを失い,熱浴温度に近づいていく過程(熱化過程)を初めて実測した。ポジトロニウムの質量が小さく,低温になると量子力学的なサイズが大きくなっていくために,熱化が非効率になっていくことを実験的に明らかにした。熱化によるポジトロニウムの冷却限界は 100 K 程度であり,目標とする 10 K 以下までの冷却にはレーザー冷却が必要となることを示した。 2. ポジトロニウムのレーザー冷却用光源の開発。142 ns の寿命で崩壊していくポジトロニウムのレーザー冷却のために,最適化した紫外光源を開発している。本光源の特殊な点の1つに,レーザー光の時間構造が挙げられる。ポジトロニウムが崩壊するまでの間継続して冷却するために,パルス発振でありながらも 300 ns 程度の長い持続時間を持ったレーザー光が必要となる。レーザー光の持続時間を長くするために,光をパルス発進させる共振器について,Q値を高くし,また共振器長を長くすることで,共振器から少しずつ光が出て行くように設計・製作を行い,持続時間の要求を達成するレーザー光源の開発に成功した。 3. 冷却に最適化したポジトロニウム生成材料の開発。ポジトロニウム冷却を効率的に行うために,陽電子をポジトロニウムに変換する生成材料として,冷却に最適な空孔径 50-100 nm を持つ多孔質かつ透明なシリカ材料が必要となる。ポジトロニウム生成材料の開発としては新手法となる,シリカガラス表面に微細穴加工を行うことで多数の穴が空いた構造を製作し,シリカ薄膜で蓋をすることで多孔デバイスを製作した。電子顕微鏡観察によりデザイン通りの加工が行われたことを確認し,低速陽電子実験施設にてポジトロニウム生成実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の進捗により,当初の予定通りとなる2018年度中のレーザー冷却パイロット実験の目処がたったため。これは,2つのポジトロニウム冷却機構のうちの1つである熱化過程による冷却効率が分かったこと,レーザー冷却光源開発における難関の1つであった長持続時間化に成功したこと,そして,ポジトロニウム生成材料の試作・試験とともに,実際にレーザー冷却実験を行う低速陽電子施設において短パルスポジトロニウムの検出に成功したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
あらゆる反物質系を含めて世界初となる,ポジトロニウムのレーザー冷却パイロット実験へ向け準備を加速していく。ポジトロニウム冷却レーザー光源の開発を完了するとともに,ポジトロニウム温度測定用紫外レーザー,陽電子集束装置の開発を行う。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Recent progress in positronium experiments for Bose-Einstein condensation2018
Author(s)
A. Ishida, K. Shu, T. Murayoshi, T. Namba, S. Asai, E. Chae, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima,B. E. O’Rourke, K. Michishio, K. Ito, K. Kumagai, R. Suzuki, S. Fujino, T. Hyodo, I. Mochizuki, K. Wada
Organizer
Low Energy Antiproton Physics Conference 2018
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Toward a Realization of Bose-EinsteinCondensation of Positronium2017
Author(s)
K. Shu, X. Fan, T. Murayoshi, A. Ishida, T. Namba, S. Asai, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima,B. E. O’Rourke, R. Suzuki
Organizer
2nd Jagiellonian Symposium on Fundamental and Applied Subatomic Physics
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Study on positronium Bose-Einstein condensation2017
Author(s)
A. Ishida, K. Shu, X. Fan, T. Murayoshi, T.Namba, S. Asai, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima,B. E. O’Rourke, R. Suzuki
Organizer
The 3rd China-Japan Joint Workshop on Positron Science
Int'l Joint Research / Invited
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