2018 Fiscal Year Annual Research Report
医療市場における「市場の失敗」に伴う社会厚生損失の経済的評価
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17J03718
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
髙橋 雅生 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 医療 / 介護 / 社会厚生 / 認知バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、介護保険における保険のカバレッジ(支給限度額)が介護サービス需要に与える影響を定量化するため、regression discontinuity design (RDD) による推定を行った。要介護認定は、申請者ごとに「要介護認定等基準時間」(以下「基準時間」)を算出し、それに基づいて要介護区分を決定する。RDDによるの識別戦略に基づき、支給限度額が大きく変化する基準時間の「境界周辺」の利用者を比較し分析を行った。さらに、介護サービスが利用者の健康状態に与える影響についても分析を進めた。前述の基準時間の閾値におけるサービス利用の外生的な変化を用い、将来の「基準時間」をアウトカムとして介護サービスが介護必要度に与えた影響を識別することを試みた。 介護保険のカバレッジ(支給限度額)がサービス利用に与える影響について推定を行ったところ、RDDによる推定値は正で統計的に優位な値となった。具体的には、カバレッジ1%の上昇に対してサービスの需要は約0.3~0.5%上昇することがわかった。この結果は、カバレッジが広がるとサービスの利用量が上昇することを強く示唆している。 サービスの利用が支給限度額を大きく下回る(50%以下)利用者群に絞り、この利用者群が支給限度額の上昇に反応するのかについて推定を行ったところ、ほとんどの場合で推定値が正の有意な値となった。これは、利用者が価格変化に直面しないにもかかわらず、「認知バイアス」によって保険のカバレッジの変化に反応したことを示している。また、健康状態に関する推定結果によると、利用者の健康状態によらず、介護サービスを多く利用することは健康状態に有意な影響を与えないということが示唆された。すなわち、保険のカバレッジの拡大は、利用者の健康の観点からみればサービスの過剰利用を誘発する可能性があるということが明らかとなった。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)