2017 Fiscal Year Annual Research Report
有用脂質生産藻類の脂質蓄積構造体である油滴に局在するタンパク質の同定と機能解析
Project/Area Number |
17J03747
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
米田 広平 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 油滴 / 珪藻 / ヤブレツボカビ類 / 中性脂質 / プロテオーム / リピドーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ストラメノパイルと呼ばれる分類群に属する2種類の単細胞真核生物、珪藻Phaeodactylum tricornutumとヤブレツボカビ類Aurantiochytrium sp.は、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった有用脂肪酸を生産し、脂質生産へ向けて有望な生物と見なされている。本研究では、この2種類の生物を用いて、細胞内に存在し中性脂質が蓄積したオルガネラである油滴の形態やオイル蓄積に影響を及ぼすと考えられる油滴タンパク質について解析を行っている。 珪藻を用いた研究では、本研究者の発見した機能未知の新規油滴タンパク質であるStramenopile-type Lipid Droplet Protein (StLDP)の機能解析を計画していた。Fucoxanthin-chlorophyll binding protein A (FcpA)遺伝子に由来するプロモーターを利用して、StLDP発現量強化株の作製を行った結果、C末側にヒスチジンタグを持ったStLDPをこのFcpAプロモーターの制御下で発現する珪藻株(H8株)の作製に成功した。H8株の解析により、StLDPには油滴表面を覆うことで油滴内の中性脂質を細胞質中のリパーゼから隔離する機能があると予想された。次年度は、StLDPの発現抑制株を作製し、その表現系の解析を行う予定である。オーランチオキトリウムを用いた研究では、ゲノム解読株であるSR21株の油滴に存在する29種類の油滴タンパク質を同定することに成功した。また、共同研究を通して、油滴特異的に存在する脂質のリピドーム解析を実行した。次年度は、油滴のプロテオーム解析およびリピドーム解析の結果をまとめ、論文発表する予定である。また、同定された油滴タンパク質のさらなる解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
珪藻での研究では、StLDPの発現量強化株や抑制株の作製と表現形の解析を行い、StLDPの持つ機能を解析する計画であった。StLDP発現量強化株の作製に成功し、その機能の解析と脂質生産性向上へ向けた議論を進め、論文1報として報告することができた。オーランチオキトリウムでの研究では、予定していた油滴プロテオーム解析を実行し、29のタンパク質を同定することができた。以上を踏まえて、初年度はおおむね期待したとおりに進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
珪藻での研究については、引き続きStLDP発現抑制株の作製とその表現系解析を行う。オーランチオキトリウムでの研究については、まず、油滴のプロテオーム解析、リピドーム解析の結果をまとめる。そして、同定された油滴タンパク質のうち、リパーゼやアシルトランスフェラーゼといった脂質代謝に関連すると考えられるタンパク質のさらなる解析を行う。
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