2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J03769
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石尾 智久 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 人格権 / リスク / 被害者の承諾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、損害発生の不確実なリスクに関する差止請求権を基礎づけることである。そこで、本年度は、フランス法の議論についての基礎的な理解を得た。 まず、フランスにおける民事責任法の機能についての通時的な分析を軸としつつ、わが国との接合に向けた足掛かりを得ることに注力した。フランスにおいては、社会状況に応じて、民事責任法の基礎が、フォート、危険、保証へと移行しており、現代では不可逆的な損害に対応すべく、民事責任法の基礎として予防を据えるべきことが主張されていることが明らかとなった。他方で、フランスでは、損害発生の不確実なリスクの法的取扱いは、リスクをどのように社会に受け入れさせるのかという観点からも議論されている。 そこで、その基礎理論として、被害者の承諾についての分析を行った。これによって、被害者の承諾の基礎理論が明らかとなるとともに、具体的な規律の一部も明らかとなった。これは、損害発生の不確実なリスクの社会への受入れについての基礎を把握する作業である。フランスにおける被害者の承諾は、人格権を中心として議論がなされている。そのため、人格権に基づいて、差止請求を基礎づけることも視野に入れた形で研究が結実しつつある。 さらに、損害発生の不確実なリスクについての法的対応として、携帯電話のアンテナの電磁波の有害性に関する判例・学説を分析することで、一定の知見を得た。この分析は、リスクに関する法的対応を具体的に考察するという意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
損害発生の不確実なリスクについての差止請求権の基礎づけを解明するには至っていないが、重要な基礎理論の一つとして、被害者の承諾に注目すべきことが明らかとなった。ここでは、わが国においては十分な議論がなされてこなかった、被害者の承諾の基礎理論が明らかになりつつある。さらに、フランス不法行為法の基礎的な理解も着実に進んでいる。これらは、リスクへの法的対応の基礎を提供しうるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって明らかになった成果を踏まえて、被害者の承諾に注目して研究を行う。これによって、被害者の承諾の法的構成、及び、具体的な規律が明らかになるとともに、リスクの社会への受入れの基礎を提示することに繋がると考える。
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