2018 Fiscal Year Annual Research Report
基準化切断値を用いたTPP加盟国グルーピングの環境経済的な妥当性評価
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17J03786
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
時任 翔平 九州大学, 経済学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | サプライチェーンマネジメント / サプライチェーンネットワーク / 産業連関分析 / ネットワーク分析 / ネットワークモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の前半では、Kanemoto et al. (2018) によって示唆された、基準化切断値を用いたグルーピングの問題に対し、新しい評価指標を提案するために、産業連関モデルにおけるネットワーク分析の再定義について論文を持つ土中哲秀氏(中央大学)とともに、ネットワーク分析における集塊度を示すクラスター係数を応用し、これまでの基準化切断値に代わる、産業連関モデルのクラスター係数を提案した。これによって国際貿易ネットワークにおけるグループの評価やボトムアップ型のグルーピングが行えるようになった。本研究は“Environmental burden reduction in the FTA framework using network analysis” のタイトルで、ローマで行われたThe 7th SETACで発表し、また、the 13th EcoBalance、第29回PAPAIOSにて発表を行った。本成果は産業連関分析の査読付き国際誌であるEconomic Systems Research誌に投稿予定である。 本年度の後半では、産業連関モデルのネットワーク化の問題について、新しい産業連関ネットワークのモデリングの提案を行った。Liang et al. (2016); Hanaka et al. (2017); 土中ら (2018) の研究成果を基に、複雑な産業連関ネットワークにおける辺の「重要さ」とその特性の定式化を行った。本研究によって、大きな間接効果を引き起こす直接的な産業間のつながり(例えば石油化学→電子機器の取引は上流下流への波及が大きい)が明確になり、また、その間接効果が上流に広がるのか下流に広がるのか明確になった。例えば電力から教育その他サービスへの取引は上流側に大きな波及をもたらすことがわかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Kanemoto et al. (2018) によって示唆された、本研究の課題の中心となる手法である産業連関モデルにおける基準化切断値を用いたグルーピングの問題点を認識・理解し、その解決案となる手法を提案することができた。 産業連関モデルのネットワーク化において、本来産業連関分析で考えられるべき直接効果、一次波及、二次波及…(以降n次波及)はすべてまとめられてしまい、直接効果が小さく間接効果の大きなサプライチェーンの両端(例えば一次産業の鉱業と三次産業の小売り)が強い繋がりで結ばれ、グルーピングを行ってもその両端のみがグループとして出てきてしまう恐れがある。また、基準化切断値を用いたグルーピングは、トップダウン型に「分割」を行う手法であるため、あまりつながりが強くない多数の「その他」の産業群が「その他の余り産業グループ」として分けられてしまう上に、産業が多数であるため総産出量は大きいことから上位グループとして認識されてしまう危険がある。これらのことから、産業連関モデルを用いたネットワークにおいてはグラフ解析手法を再定義する必要があると言える。 本年度の前半では、上記の基準化切断値を用いたグルーピングの問題に対し、新しい評価指標を提案するために、産業連関モデルにおけるネットワーク分析の再定義について論文を持つ土中哲秀氏(中央大学)とともに、ネットワーク分析における集塊度を示すクラスター係数を応用し、これまでの基準化切断値に代わる、産業連関モデルのクラスター係数を提案した。本年度の後半では、上記の産業連関モデルのネットワーク化の問題について、新しい産業連関ネットワークのモデリングの提案を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は平成30年度に提案した、産業連関モデルにおける基準化切断値を用いたグルーピングにおける問題点を解決した、新しい産業連関ネットワークモデリング手法と新しいグルーピング指標を、Eora、EXIOBASEなどの大規模多地域産業連関表に適用し、枠組みも新しくなったTPPやRCEPなどのメガFTAの環境・経済的な効率と妥当性について議論していく。
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