2017 Fiscal Year Annual Research Report
国際移動のなかの「からゆきさん」――日本の開国から戦間期にかけての通時的分析
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17J03823
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
嶽本 新奈 明治学院大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 性 / 移動 / 権力 / からゆきさん / 再生産労働 / 密航 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2017年度は、シンガポールでの資料調査と九州地域の現地調査および資料収集をおこなった。シンガポールではシンガポール国立公文書館でマイクロフィルム資料を閲覧、収集してきた。だが、シンガポールでの調査を進めながら、他方で「からゆきさん」の送り出し地域である九州地域の現地調査や資料収集の重要性も実感し、年度後半には九州地域の調査も敢行した。 その国内調査では、「からゆきさん」が多く出たとされる天草・島原地域で地元の郷土史家の方、歴史民俗資料館館長、「からゆきさん」に所縁のあった方々からお話を伺うことができた。地元の方々の「からゆきさん」への思いは単純ではないため、少しずつ信頼関係を築きながら今後もお話をきかせていただきたいと考えている。 また、当時、国際港であった口之津港や長崎港、門司港などの地理的状況や女性の移動の具体的な経緯の検討に着手できた。港付近に設置される「遊郭」と「からゆきさん」の関係を含んだ女性の労働状況など、なお考えるべき課題が残されているが、それは現地に行き、当時の地図と照らしあわせながら地理的状況を把握することが肝要であった。 また、「からゆきさん」を国際移動や再生産労働の観点から考察するために、女性の国際移動とあわせて再生産労働の理論に関する先行研究を学びはじめたところである。 これら上記の研究はまだ計画の全体からみれば緒についたばかりではあるが、引き続き着実に積み重ねていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況がやや遅れているのには理由が2つある。1つは、当初の想定よりも収集した資料の整理に時間がかかっているためであり、2つ目に、現地調査で地元の人々から話を伺うにあたって時間をかけて信頼関係を築く必要があるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況がやや遅れていることの反省に基づき、資料整理等はアルバイトを雇ってお願いするなど、より効率的に作業が捗る方法を模索していきたい。また、研究遂行には国内での調査もさることながら海外での資料収集が不可欠なため、入念な事前準備を行い、計画どおりに研究が進められるよう時間確保に努めたい。
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Research Products
(6 results)