2017 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding of the atmospheric super-rotation on Venus from the ground-based telescope and AKATSUKI coordinate observations
Project/Area Number |
17J03862
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今井 正尭 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 地上望遠鏡観測 / 長期連続観測 / 金星気象 / 惑星大気 / 大気波動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金星大気の超回転現象を理解するために、金星における惑星大気波動(Kelvin波とRossby波)の理解を目的としている。本年度は、2種類の大気波動の寿命や、波動が切り替わる際の振る舞い、平均東西風速との関係を理解することを目標とし、以下の研究作業を行った。 観測: 北海道大学附属天文台の1.6-mピリカ望遠鏡を利用し、世界で初めて約5か月に及ぶ金星の長期連続観測を実現した。同時に東広島天文台の1.5-m望遠鏡を利用した複数望遠鏡による共同観測を実施し、他の観測環境で取得されたデータとの整合性の確認と、北海道と広島という遠隔地での観測によって、悪天候による欠測を回避することに成功した。2017年の地上観測期間は、2017/1/3-2/19と4/23-9/10であり、いずれもデータ取得率が70%以上を達成している。地上観測と並行して、2016/11/6-2017/3/2と6/15-9/31の期間について、あかつき搭載UVI取得画像を解析し、最終的に1金星年(243日)以上の約10ヶ月間に渡る長期連続データを得た。 解析: 取得されたすべてのデータを、±14日の範囲で1日毎にサブデータセットとして分割し、それぞれについて周波数解析を実施することで、約10日の分解能で、波動周期の時間変化を推定した。 結果: 観測期間中の大部分で、Kelvin波の特徴を持つ3.5-4日周期成分が存在し、約5日周期のRossby波は突発的に発生し、最長約30日しか続かないことを明らかにした。また、今回捉えられた2つの波動が切り替わる前後で、UVIデータから推定した東西風速を比較し、変化が誤差の範囲内で小さいことを調べた。 成果: 以上の成果を、国内3件 海外1件の学会で発表し、博士論文としてまとめ、博士(理学)の学位を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とする、世界初の地上望遠鏡による連続観測を達成し、また地上観測と同時期のあかつき観測の結果比較から、両者の整合性を確認することができ、高い信頼度の金星の長期連続観測データを取得することができた。また、他の天文台との共同観測の実施が悪天候による欠測リスク回避に有効であり、複数の装置による観測データを一度に処理する解析スキームを確立できたことで、今後国内外での共同観測の実施を加速するための準備ができた。年度後半は、博士論文を完成させるためのデータ解析や執筆といったまとめ作業に追われたため、国際学術論文への投稿が遅れているが、間も無く投稿が完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年から2019年にかけては、地上からの観測好機とあかつきの観測可能時期が交互・相補的に存在するため、これまでに確立した観測手法を可能な限り広く国内外の地上望遠鏡観測に適用し、金星における惑星大気波動のさらなる長期観測が実現できる。これによって、複数金星年にまたがった大気波動のもつ変動を理解し、より長期の平均東西風変化などとの比較から、金星気象の平均的な描像と変動成分を切り分けて理解することが可能になると予想する。最終的には、金星大気力学の数値モデルにて、本研究の観測事実に基づいた変動成分を再現する試みを通して、金星大気の超回転が長年維持されるメカニズム解明近づく重要な成果になると想像する。
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Research Products
(4 results)