2017 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of novel superconducting phenomena in magnetic fields induced by strong-coupling and multi-band effects
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17J03883
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 景亮 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 超伝導ゆらぎ / BCS-BECクロスオーバー / 低次元性 / 擬ギャップ |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の実験によると、鉄系超伝導体FeSeは、非常に強い電子間引力相互作用を内在する強結合域超伝導体である可能性があり、注目を浴びている。一方、FeSeでは磁場中の熱力学的性質に新奇なふるまいが観測されており、理論的考察が求められている。またFeSeが多バンド物質であることも考慮し、本研究課題では、強結合性や多バンド性が磁場中での超伝導現象に及ぼす影響を調べ、FeSeで観測された新奇なふるまいを解き明かすことを目的としている。
本年度は、特に強結合性の効果に注目して研究を行い、以下の成果を得た。 (1)単純な電子系のモデルを出発点に取り、冷却Fermi気体の研究で頻繁に使われる手法と、本研究員が開発した手法を組み合わせることで、超伝導ゆらぎに起因した反磁性応答と比熱を計算した。その結果、弱結合域の従来の超伝導体に比べ、強結合域の超伝導体では反磁性応答や比熱が増大することがわかった。この結果をFeSeの実験結果と比較することで、FeSeで観測された大きな反磁性応答は、強い引力相互作用の効果として定性的に説明できることを明らかにした。さらに、反磁性磁化の磁場依存性を調べると、強結合域では広い磁場域でクロッシング現象が現れることを発見し、FeSeの実験結果と整合的になっていることを示した。 (2)格子上の電子系のモデルを出発点にとり、次元性を変えたときの転移温度やペア形成温度の計算を行った。その結果、次元性低下に伴って電子状態密度に擬ギャップが生じることを見出し、次元性低下により弱結合域と強結合域が移り変わるBCS-BECクロスオーバーが生じうることを明らかにした。また、超伝導体において超格子化や一軸性圧力印加を行うことによって実験的にBCS-BECクロスオーバーが引き起こせる可能性を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題で注目する効果の一つである多バンド性を考慮することはできなかったものの、今まで知られていなかった磁場中の超伝導ゆらぎ現象への強結合性の効果を明らかにすることができた。また、FeSeで観測されていた新奇現象が、強結合性により定性的に理解できることを初めて指摘した。さらに、FeSeが準二次元系であることに注目することで、次元性とBCS-BECクロスオーバーの関係を発見するに至り、当初の研究計画では予想されない成果を生み出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の動機づけとなった超伝導体FeSeは多バンド物質であるため、実験結果との定量的な比較を行うためには多バンド性を取り入れる必要があると考えられる。また、多バンド物質におけるBCS-BECクロスオーバーの性質はほとんど知られていないため、多バンド物質を対象に本研究を拡張することによって新しい現象を発見できる可能性がある。そこで、今後の研究では、多バンド物質におけるBCS-BECクロスオーバーの性質の解明を行う予定である。
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