2017 Fiscal Year Annual Research Report
ディスレクシア児評価のための、事象関連電位による文字列処理の習熟度評価法の開発
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17J03889
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇野 智己 北海道大学, 教育学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 文字列処理 / 学習 / 事象関連電位 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,日本語を母語とする定型発達児の文字/文字列への習熟過程が文字列の早期皮質処理を反映する事象関連電位(Event-related potential: ERP)にどのように反映されるかを調査した。定型発達児は通常,学齢期を通した文字への熟達に伴い,文字列を一文字ずつ読む逐字読みから一つの単位として一度に読むまとまり読みへと質的に変化する。こうした読み方略の変化は文字列への注視回数の減少に反映されると考え,アイトラッカーによる視線計測を用いて児童の読み方略の変化を横断的に検討した。また,同じ児童における平仮名/記号1文字,あるいは3文字から構成される平仮名単語,非単語および記号列に対するERPを計測し,読み方略の質的変化と早期皮質処理過程の関係性を検討した。 また,日本語を母語とするディスレクシア児のERPの様相を検討する予備的調査として、ディスレクシア児(小学校3年生)1名に協力を依頼し、画面中央に短時間提示される2-3文字の平仮名単語、非語および記号列に対するERPを測定した。この調査は,文字列特異的に惹起するERP成分であるN170の様相に着目した。結果として、記号列よりも文字列がより陰性方向に振れる傾向は見られたものの,典型的に観察される左半球優位性は確認できなかった。この結果は,文字列への知覚的熟達は本児童でも定型発達児と同程度習熟しているが,書記素から音素への変換過程はいまだ未成熟であることを示唆するものであった。今後は対象児を追加し,個人の認知特性と照らし合わせた詳細な検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成人を対象とした予備的調査の解析や健常児データの収集に当初の予定よりも時間を要しているため、計画よりもやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は読字能力やそれに関連する認知能力の個人差を取り扱うため、多くの参加者データが必要である。健常児データに関しては来年度も継続してデータ収集・解析を行う。 ディスレクシア児については対象児童を追加した上,来年度も継続的に学習支援を実施し,介入前後のERPの比較検討を行う予定である。
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