2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J03916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 宰栄 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | GKZ超幾何函数 / Gauss-Manin系 / Laplace型積分表示 / Euler型積分表示 / Residue型積分表示 / Mellin-Barnes型積分表示 / Pochhammer cycle / Hankel contour |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度から引き続き行ってきた、振動積分(Gauss-Manin系)と呼ばれる特殊函数の積分サイクルの構成を本年度も引き続き発展させた。特に、本年度はGKZ超幾何函数の理論との関係がついて、研究に大きな進展があった。
1.GKZ超幾何函数はSchulze-Waltherらの結果により振動積分としてとらえることができる。また、そのサイクルの空間はrapid decay homology群として捉えることができる。私はNewton図形に対するある仮定の下、rapid decay homologyの特別な基底を構成し、これが級数展開およびMellin-Barnes型積分表示に書き直せることを示した。さらに、Mellin-Barnes型積分表示の方はNewton図形に関する仮定なしに一般の正則三角形分割に対応して構成できることを示し、級数解の基底(GelfandおよびFern\'andez-Fern\'andezによるもの)との対応を示した。この対応には正則三角形分割の各単体に付随する有限Abel群の指標行列が現れる。
2.さらに進んでGKZ超幾何函数の3つの積分表示、すなわちEuler型、Laplace型、Residue型積分表示を考察し、これらに対応するGauss-Manin系はGKZ系がregular holonomicである場合にはD加群として同型であることを証明した。また、正則三角形分割をとると、そこから適切なtorusの(被覆)座標変換が定まり、それぞれの積分表示に対応したサイクルの基底が、Pochhammer cycleとHankel contourの組み合わせで構成され、級数解による基底との変換公式はやはり正則三角形分割の各単体に付随する有限Abel群の指標行列たちで記述できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
振動積分の理論とGKZ系の関係は知られていたが、積分サイクルの構成に組み合わせ的な方法を反映する手法はこれまで知られていなかったように思われる。具体的なサイクルの構成及び級数解との関係が明らかになったことで、確定特異点型D加群のRiemann-Hilbert対応を用いて確定特異点型GKZ系の解層とResidue型積分表示のサイクルのなす局所系との間の同型も示すことができた。これはBeukersによって予想されていた同型の証明である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.GKZ超幾何函数の3つの積分表示、すなわちEuler型、Laplace型、Residue型積分表示に対するサイクルの構成方法は昨年度の研究によりほぼ記述が完成した。この構成方法の著しい点は級数解との対応が明確な点である。しかし、Laplace型積分表示については積分路が非有界なchainのレベルで構成されるのみであり、より精密なrapid decay homology群としての記述が確立していない。そこで本年度は昨年度までに完成したサイクルの構成方法をtoric compact化と結び付けて記述し、rapid decay homologyのレベルでの解の基底の構成を目指す。これによりrapid decay homologyと級数解との対応を確立したい。
2.確定特異点型GKZ系の級数解と正則三角形分割の対応から、正則三角形分割の取り換え(flip)がGKZ超幾何函数の接続(flop)を与えるという思想がある。これをより数学的に接続問題としてとらえなおし、接続行列の計算を行う。接続行列の計算にはMellin-Barnes型積分表示が用いられるが、昨年度までに構成したEuler型、Laplace型、Residue型積分表示のサイクルのレベルでの接続が何を意味しているのかも興味深い。
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