2017 Fiscal Year Annual Research Report
強結合冷却原子気体を用いた中性子星・核物質の定量的理論研究
Project/Area Number |
17J03975
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田島 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 非対称核物質 / 冷却原子気体 / 中性子星 / BCS-BECクロスオーバー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は非対称核物質における陽子の存在や、核力に起因した粒子間相互作用の有効距離、短距離斥力の効果を考慮した有効ハミルトニアンを元に、Nozieres-Schmitt-Rink理論を用いて超流動相転移温度の決定を行った。陽子の割合が増加すると強い陽子-中性子間引力の影響を受けて中性子-中性子ペアの超流動相転移温度は抑制されることがわかった。また、陽子数が十分多い場合、低密度領域で重陽子がBose-Einstein凝縮することも明らかにした。 上記に加え、有効距離の影響を調べるために、2成分フェルミ原子気体においてnarrow Feshbach共鳴磁場近傍で実現される負の有効距離がある場合に1粒子励起スペクトルがどのように変化するかを調べた。負の有効距離を考慮するために結合フェルミオンボソンモデルを採用し、T行列近似の枠組みで超流動相転移温度や1粒子状態密度の散乱長・有効距離依存性を計算したところ、有効距離が負に大きくなる場合、粒子間の引力が実効的に強くなり、散乱長が発散した中間結合領域では1粒子状態密度に現れる擬ギャップ (常流動相でありながら相転移温度近傍で1粒子励起にギャップが現れる現象)のサイズが大きくなることを示した。この結果は、中性子物質のような正の有効距離を持つ場合に超流動揺らぎによって発現するこのような量子多体効果が抑制されることを示唆している。 また、中性子星物質中の中性子と陽子のような粒子数差の大きな場合の多体効果を調べるために、さらに冷却原子気体における多体フェルミポーラロン問題にも取り組んだ。粒子数差がない場合の2成分フェルミ気体の基底状態の強結合補正を定量的に記述できる拡張T行列近似を用いて、ポーラロンエネルギーを計算した結果、実験結果を定量的に説明することに成功した。今後はさらに有限温度効果やトラップの影響をより詳細に調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非対称核物質の強結合理論の構築の際には接触型相互作用、または有効距離までをとりいれた相互作用ポテンシャルを用いることを計画していたが、本年度ではさらに斥力芯まで考慮した相互作用ポテンシャルで強結合理論の構築を行うことができた。 また、当初計画していた上記の非対称核物質に対する研究とは別に、冷却原子気体系での負の有効距離が実現している場合の1粒子励起スペクトルに対する強結合効果についても明らかにすることができた。 以上より、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
非対称核物質の強結合理論を超流動相転移温度以下へ拡張し、超流動ギャップや状態方程式の決定に取り組む。また、中性子星内部の高密度物質とのアナロジーを有する冷却原子気体系の熱力学的性質の解析を行う予定である。
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Research Products
(12 results)