2018 Fiscal Year Annual Research Report
強結合冷却原子気体を用いた中性子星・核物質の定量的理論研究
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17J03975
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田島 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / 中性子星 / エフィモフ効果 / マルチバンド超伝導 / フェルミポーラロン / BCS-BECクロスオーバー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に(1)中性子星内部の非対称核物質において標準核密度近傍まで超流動相転移温度を解析できる理論の開発、(2)強く相互作用する3成分フェルミ気体の多体相関の影響、(3)マルチバンド超流動体のBCS-BECクロスオーバー、(4)ポーラロン-ボルツマン気体転移の解析に取り組んだ。 (1)に関しては、散乱実験におけるs波の位相シフトを2fm^-1まで再現することができるマルチチャンネルの相互作用を用いNosieres-Schmitt-Rink理論の枠組みで超流動揺らぎの効果を取り込んだ。得られた中性子超流動相転移温度は低密度側における先行研究の量子モンテカルロ法の結果と定量的に一致した。また、陽子が混在する場合は高密度側で陽子超伝導の相転移温度が中性子超流動のそれを上回ることが確認できた。 (2)に関しては、媒質中の2体、3体相関を、T行列近似、及び、Skorniakov-Martirosian方程式を用いて記述することを試みた。その結果、有限の有効距離を有する場合はQuantum-Chromodynamics (QCD)に似た相図が得られた。低密度領域ではEfimov3量体が支配的であるのに対し、高密度低温領域ではカラー超流動相が現れることを示した。 (3)に関しては、非対称核物質の解析の際に開発したマルチチャンネル相互作用を有する4成分フェルミオン系の理論を応用することでマルチバンド超流動体の相転移温度の解析を行った。この系の超流動相転移温度はシングルバンドのそれと比べ大幅に上昇する他、クロスオーバー領域における擬ギャップ領域が狭まる傾向をみることができた。 (4)に関しては、前年度のポーラロンの理論を用い、近年の実験で得られたポーラロン-ボルツマン気体転移の解析を行った。相互作用を変えると転移はクロスオーバー、ジャンプ、2ピークの共存と変化する様子を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱である中性子星物質の超流動相転移温度の解析に成功したことに加え、QCDとアナロジーをもつ3成分フェルミ気体の研究や、それらの応用としてフェルミポーラロンやマルチバンド超伝導の研究も推進することができたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで開発してきた非対称核物質の超流動理論の適用範囲を広げることに加え、2体相関、3体相関が重要となる冷却原子気体系の解析を進める予定である。また、フェルミポーラロンにおけるポーラロン間相互作用やマルチバンド超伝導における多体効果にも取り組む。
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