2018 Fiscal Year Annual Research Report
栄養欠乏条件における植物細胞小胞輸送系の機能変換とその意義
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17J04003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田 大和人 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 膜交通 / トランスゴルジネットワーク / タンパク質分解 / ショ糖欠乏 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにTGN局在タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質、及びTGN局在タンパク質に対する抗体を用いた解析や、共焦点蛍光顕微鏡を用いた解析により、ショ糖欠乏条件ではTGN局在タンパク質は選択的に分解されることを明らかにした。さらに、FM1-43を用いた解析により、ショ糖欠乏条件でのTGN局在タンパク質分解後も、細胞内に存在するTGNは分解されないことが判明した。TGN局在タンパク質分解後の、輸送の変化について知見を得るため、細胞外分泌型スポラミンの検出や、多糖分解酵素及び糖エステル分解酵素の活性測定を行い、ショ糖欠乏条件においても、これらの物質は分泌が続くことを明らかにした。一方で、細胞壁構成成分であるペクチンはショ糖欠乏条件で分泌は抑制されることを明らかにした。 所属研究室において阻害剤を用いた実験により、TGN 局在タンパク質の分解にオートファジーが関与する可能性が示されていた。本年度は、YFP-ATG8とNtSUT2-mRFPを共発現する細胞を作成し、共焦点蛍光顕微鏡を用いて解析を行った。ショ糖欠乏条件では、YFP-ATG8はNtSUT2-mRFPのTGNを示す構造と共局在をする様子が観察された。これは、ショ糖欠乏条件で、マクロオートファジーにより、TGNやSVC局在のタンパク質が分解される可能性を示唆していた。 ショ糖欠乏状態において、タバコ培養細胞内のTGN局在タンパク質は分解されることが判明したが、この分解が植物種によらず普遍的なものであるかは不明である。そこで、現在、シロイヌナズナにおいてショ糖欠乏条件でのTGN局在タンパク質分解が生じるかを解析することを目的とし、シスゴルジ局在であるST-mRFP、トランスゴルジ局在であるGFP-SYP41、Venus-SYP42、mRFP-SYP43をそれぞれ発現するシロイヌナズナを育成、及び種子採取中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TGN局在タンパク質の減少がオートファジーによるかを検討する為、ATG5とATG7のRNAiノックダウン細胞を作製し、オートファジー阻害によるTGN局在タンパク質の分解抑制の有無を解析する計画であった。しかし、細胞ラインの作製に時間がかっており、現在のところ作成中である。一方で、ATG8とYFPの融合タンパク質とTGN局在タンパク質であるNtSUT2とmRFPの融合タンパク質を共発現する細胞については作成できた。この細胞を用いて解析をし、TGN局在タンパク質がショ糖欠乏条件でマクロオートファジーにより分解される可能性を見出した。FM1-43を用いた解析から、TGN局在タンパク質分解後もTGNそのものは分解されないことが判明しているが、電子顕微鏡を用いた、TGNの構造変化を解析は、現段階で完了していない。 これらの解析の遅れは、実験・解析に重要なmKikGRを用いた分解機構の解析系が何らかの要因によりうまく働かなくなっていることや所属研究機関の移転により長期にわたり実験を停止する必要があったことが原因である。 ショ糖欠乏条件でのTGN局在タンパク質の分解が植物種によらず普遍的なものであるは不明である。そこで、シロイヌナズナにおいてもショ糖欠乏条件でのTGN局在タンパク質の特異的な分解が生じるか否かを解析するため、シスゴルジ局在のST-mRFP、トランスゴルジ局在のGFP-SYP41、Venus-SYP42、mRFP-SYP43をそれぞれ発現するシロイヌナズナを育成中、及び種子の採取中である。 また、現在判明している実験結果をまとめた論文を作成中である。 上記のように分解機構解明の実験は進行中であるものの未完了である。一方、物質輸送の変化の解析や、シロイヌナズナを用いたショ糖欠乏条件における解析は予定通り進行している。よって区分(2)と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、mKikGRを用いた合成・分解の実験系が解析できない状態になっているため、利用可能な状態にできるよう、実験の条件検討を試みる。mKikGRに生じた問題の原因は不明であるが、細胞の培養条件を検討することによって、原因の追究及び、mKikGRを用いた解析系の再構築を行っていく。 並行して、TGN局在タンパク質の分解系の仕組みを解析するための実験を行う。ATG5、ATG7のノックダウンライン作成を中心として進める。もしRNAiによるノックダウウンが難しいようであれば、CRISPR-Cas9によるゲノム編集による遺伝子の破壊を試みる。ATG5,ATG7をノックダウンした細胞を用いて、ショ糖欠乏条件で生じるTGN局在タンパク質分解が抑制されるか否かを解析する。 細胞外へ輸送される物質については、細胞外分泌型スポラミン、多糖分解酵素、糖エステル分解酵素、及びペクチンに着目し解析をすすめることで、ショ糖欠乏条件における輸送変化の解析が進んでいる。しかし、細胞内での輸送系や輸送物質の変化については、未解析の部分が多い。そこで、細胞内部の輸送系についての解析を行う。スポラミンを用いたパルスチェース実験を行い、輸送系の変化を解析する予定である。 ショ糖欠乏条件におけるTGN局在タンパク質の分解が植物種によらず普遍的かを解析する。ショ糖欠乏条件でTGN局在タンパク質の特異的な分解が生じるか否かや、輸送系の変化するか否かをシロイヌナズナを用いて解析する。現在、シスゴルジ局在であるST-mRFP、トランスゴルジ局在であるGFP-SYP41、Venus-SYP42、mRFP-SYP43をそれぞれ発現するシロイヌナズナを育成中、及び種子の採取中であり、これらを用いて解析を行う。
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Research Products
(4 results)