2017 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスの増殖過程におけるノイラミニダーゼの役割
Project/Area Number |
17J04123
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
髙田 光輔 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / ノイラミニダーゼ / シアル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスは、HA蛋白質のシアル酸結合によって細胞に感染すると考えられている。しかし、近年分離されたH3N2季節性インフルエンザウイルスのHA蛋白質は赤血球凝集活性が低下し(Lin et al., PNAS, 2013)、NA蛋白質はシアル酸を介して赤血球凝集することが示唆されている(Gulati et al., PLoS One, 2013)。そこで申請者は、近年のH3N2季節性インフルエンザウイルスはHA蛋白質だけではなくNA蛋白質もウイルスの感染初期に寄与しているという仮説を設定した。その仮説を実証するために、HA蛋白質の赤血球凝集活性が著しく低下したH3N2季節性ウイルスと、HA蛋白質の赤血球凝集活性が低下していないH3N2季節性ウイルスのNA蛋白質の性質を比較し、NA蛋白質のシアル酸結合の意義と、それによるウイルス感染への影響を明らかにする。そこで1年度目は、比較解析するウイルス株を選定し、HA蛋白質の性状を明らかにした。 本年度は、性状比較するウイルス株を選択するために、インフルエンザウイルスの塩基配列データベースに登録されている1968年から2015年までに分離されたH3N2季節性インフルエンザウイルスNA蛋白質のアミノ酸配列を解析した。さらに、選択したウイルスのHA蛋白質の性状を確認するため、ウイルスの赤血球凝集活性と糖鎖反応性を調べた。その結果、近年のH3N2季節性インフルエンザウイルスは、ニワトリ・シチメンチョウ・モルモット血球に対する凝集活性がみられないことが確認できた。さらに、Octetシステムによる糖鎖反応性試験を行い、近年のH3N2季節性インフルエンザウイルスは長い構造のα2,6結合型シアロ糖鎖へ優先的に結合することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、HA蛋白質の性状が異なるH3N2季節性インフルエンザウイルス株を絞り込むことができた。これまでの研究はおおむね、計画通りに進んでおり、この結果をもとに近年のH3N2季節性インフルエンザウイルスのNA蛋白質の性質を明らかにできると期待される
|
Strategy for Future Research Activity |
1年度目の成績より、HA蛋白質の性状が異なるH3N2季節性インフルエンザウイルスを選択することができた。そこで、第2年度目にこれらのNA蛋白質の性状解析を行う。比較解析するH3N2季節性インフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性を測定する。 また、NA蛋白質が有するシアル酸結合活性のみでウイルス感染が成立するかを明らかにする。そのために、細胞への侵入は起こるが感染性粒子を形成しないレポーター遺伝子含有ウイルス様粒子(VLP)を用いる。リバースジェネティックス法を用い、異なる株由来のHA蛋白質およびNA蛋白質を発現するVLPを作出する。さらに、HA蛋白質のレセプター結合活性を不活化した変異HA蛋白質を持つVLPも検討する。
|