2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動学習に内在する大脳皮質運動野神経回路と可塑的変化の形態-機能連関
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17J04137
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
孫 在隣 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 運動野 / 学習 / シナプス可塑性 / 光学・電子顕微鏡相関解析 / ATUM-SEM法 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一次運動野(primary motor cortex, M1)は大脳皮質からの最終的な運動指令の出力を担う領域である。運動学習はM1において神経回路の再編を引き起こすことが先行研究により示唆されている。この再編された神経回路を描出するため、運動学習により変化したM1のニューロン上の棘突起を取り巻く線維連絡を詳細に観察している。 運動野第5層錐体細胞が蛍光標識されたThy1-eGFP-Mマウスを用い、前肢を用いたsingle seed reaching taskを課すことで、まずは運動学習による棘突起動態を2光子励起顕微鏡下で観察した。それにより、学習初期での棘突起新生率は運動学習の達成度と有意に相関することがわかった。この学習に伴い新生した棘突起へシナプス入力する軸索線維の由来を辿るため、同じ脳標本を薄切し、免疫組織化学を施した。これを共焦点レーザー顕微鏡下で観察し、新生棘突起に入力する軸索終末の組織化学的特性を調べると、運動学習に伴う棘突起形成を引き起こすシナプス入力の由来が、学習形成過程においてダイナミックに変化することが判明した。 また、同様の脳標本を用い、さらに電子顕微鏡レベルでの解析を進めている。運動学習時に2光子励起顕微鏡下で棘突起動態を観察した脳標本から電子顕微鏡観察用組織処理を施し、連続超薄切片自動テープ回収装置 (ATUM)による連続超薄切標本を回収する。これをさらに走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、共焦点顕微鏡画像と照らし合わせる(correlated light and electron microscopy, CLEM)ことで新生棘突起に入力する軸索線維を同定する。このATUM-SEM法では、その特性を最大に活かすための組織処理法や回収用テープの開発が必要であったため、それらの確立・選定を行った。現在この画像取得・解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学顕微鏡レベルでの解析は順調に進行している。電子顕微鏡解析も当初の計画通り始められている。
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Strategy for Future Research Activity |
光学顕微鏡観察から取得されたデータの解析を進める。学習による巧緻運動の洗練化と運動野興奮性ネットワークの可塑的変化との相関を評価し、さらにその興奮性シナプス入力の由来を定量的に解析する。 また、ATUM-SEM法を用いた電子顕微鏡解析を進める。画像撮影に膨大な時間を要するが、撮影と画像解析を進め、新生スパインに入力する軸索の形態学的特性を模索する。
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