2017 Fiscal Year Annual Research Report
伐採強度の異なる森林における、植物を介したSi循環パターンの解明
Project/Area Number |
17J04175
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 亮介 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 森林伐採 / 熱帯低地林 / ケイ素 / ボルネオ / 物質循環 / 森林管理 / 東南アジア / 生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯林が持続的な生態系を維持するメカニズムを理解する努力の一環として、森林伐採が熱帯低地林のケイ素循環に与える影響を調査した。調査はマレーシアのボルネオ島内のデラマコット地域で実施した。森林のケイ素循環パターンを調べるため、森林で優占する樹種を対象として、落葉の採集を行なった。また年間スケールでの森林におけるケイ素の循環量を調べるため、共同研究者から一年間分の落葉試料の提供を受けた。試料からはケイ素の抽出を行い、青色比色法を用いて分光光度計で定量化した。得られた結果から、森林伐採が行われた地域では、ケイ素を大量に土壌から吸い上げるタケの影響により、森林のケイ素の循環量が大きくなる事が示された。 また、森林伐採で林内の樹木の種組成が変化し、結果として、樹木(タケを除く)を介した年間ケイ素量には変化が見られなかった。結果から示唆されるメカニズムは以下の通りである。東南アジアで伐採対象となる樹木フタバガキ科は、伐採が入った熱帯林では、種数、優占度がともに低下する。この失われたフタバガキの中にはケイ素を多量に土壌から吸収するものも含まれている。伐採によると考えられるこれらの種の消失は、伐採後の攪乱地を好む種(主にマカランガ属)に置き換わる。マカランガ属の樹木は、森林伐採により生態系から消失したフタバガキ科の樹木と同程度の葉におけるケイ素蓄積が認められる。そのため、同様のケイ素集積能力を有する種の入れ替わりにより、伐採後も樹木を介したケイ素循環量は一定に保たれると考えられる。 以上をまとめると、森林伐採は、林内に生育する種の変化を通じ、自然生態系のプロセスに大きく影響を与えうる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの結果から、森林伐採が行われた熱帯林における、地上部のケイ素循環メカニズムが明らかになってきている。これは本研究で目的としている、伐採が熱帯低地林におけるケイ素循環に与える影響の解明における大きな一歩である。当初の計画から、初年度は地上部のケイ素循環パターンの解明に取り組むことにしていたため、本研究課題の進捗状況は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
地上部のケイ素循環の理解を進めてきたが、今後は地下部についても明らかにしていく必要がある。植物は土壌からケイ素を吸収し、主に落葉を通じて土壌にケイ素を還元する事が知られている。土壌中のケイ素の動態は、森林生態系における栄養塩の保持に関わる二次鉱物の生成にも大きく関係する。伐採の入った熱帯林においては、どのように植物が土壌中のケイ素の垂直分布に影響を与えるのかは全く明らかにされておらず、今後取り組むべき課題である。
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Research Products
(5 results)