2018 Fiscal Year Annual Research Report
Adaptive significance of leaf trichome in Metrosideros polymorpha
Project/Area Number |
17J04193
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
甘田 岳 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 葉トライコーム / ハワイフトモモ / 適応放散 / 葉面濡れ / 葉面吸水 / 光合成 / 樹液流 / 乾燥適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、進化のモデル樹木であるハワイフトモモの適応放散において、最も重要と考えられる形質である葉トライコーム(葉毛)の適応的意義の解明を目指して行った。葉トライコーム量は乾燥地や高標高地ほど多くなり、湿潤地では無毛個体も生息することから、葉トライコームは乾燥適応や低温適応に貢献していると考えられるが、どのような機能を有しているのかは未だ未解明である。本研究では、ハワイフトモモの葉トライコームの適応的意義の解明を目的とし、有力と考えられる3機能:①拡散抵抗増加、②葉面濡れ促進、③被食防衛、を評価している。 当該年度は主に機能②についての評価を行った。室内実験より、本種の葉トライコームはクチクラをもたずに濡れやすく、葉面吸水を促進し、水ポテンシャルを上昇させた。野外調査でも、葉トライコーム量が多いほど濡れ持続時間が延びた(最大2時間)。一方、葉の濡れを阻害すると1日当たりの光合成が低下したことから、本種の葉トライコームは葉面濡れを促進し、葉面吸水を促進することで、乾燥下での光合成生産に寄与することが示唆された。以上の結果は、第66回日本生態学会においてポスター発表した。 機能③に関しては原著論文として取りまとめ国際誌に投稿し、現在査読中である。 また、当該年度とこれまでの研究成果を合わせた成果の一部を、国際学会(The 46th Naito Conference)と国内学会(第50回種生物学会シンポジウム)で発表し、それぞれで最優秀発表賞を受賞した。 さらに、本研究を遂行する中で、形質の機能の実証的評価の重要性を実感し、多くの研究者とこれを共有するために、第66回日本生態学会にて自由集会「植物のかたち―実証的アプローチ―」を主催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は各機能に関して評価を行い、最終的には機能間の相対評価を目指している。それにはまず各機能の詳細な評価が必要となる。以下、各仮説に関する進捗状況である。 機能①拡散抵抗増加に関する研究は、新たな解析も加わり新知見を得るに至っており、原著論文としてまとめられる見通しが立ち、間もなく投稿予定である。 機能②葉面濡れ促進に関しては、新たな測定機器を作成するなどの工夫が功を奏し、当該年度の調査で葉面濡れの光合成生産への寄与を定量化することができた。ただ、膨大な手間のかかる測定手法を用いており、十分なサンプル数を確保できていない。今後、追加調査によって、サンプル数の確保、より詳細な生理実験を行う予定である。 機能④被食防衛に関しては、葉トライコームによる被食防衛を介した乾燥適応貢献という新知見を得た。この研究成果は国際誌に原著論文として投稿し、現在査読中である。 以上のように、各機能に関して研究は順調に進んでいる。しかし、論文の受理まで思うように至っていないため、(2)の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、機能②の不足データや追加実験を行い、より詳細な評価を行う。また、機能①②の論文化を迅速に行い、年度内に投稿する予定である。 各機能の評価がまとまってきた段階で、各機能を相対的に評価するモデルを作成する。このモデルを用いた解析によって、どのような環境でどの機能が相対的に重要であるかを評価することができ、葉トライコームの顕著な変異の解明に貢献できると考えられる。 最後に、これら一連の研究成果を博士論文としてとりまとめる。
|
Research Products
(3 results)