2017 Fiscal Year Annual Research Report
微生物により合成されたグルカル酸からの高性能バイオベースポリマーの合成と材料化
Project/Area Number |
17J04203
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
呉 宇シン 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | グルカル酸 / キシリレンジアミン / ポリアミド / 重縮合 / バイオベースポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、石油を原料とせず、再生可能なバイオマスを原料とするバイオベースプラスチックの開発が望まれている。グルカル酸は、アメリカエネルギー省が定める12種類のバイオマスリファイナリー基幹物質の一つであり、野菜や果物に微量に含有されている。これまでグルコースを硝酸で酸化することによって作られていたが、最近、遺伝子組み換え大腸菌により大量生合成されるようになった。しかし、プラスチックなどの材料用途への応用は未だなされておらず,新規利用法の開発が非常に重要である。 本研究では、グルカル酸を原料としたポリマー材料の開発を目指し、グルカル酸の4つの水酸基をアセチル基で保護したモノマーの合成と、ジアミンあるいはジオールとの重縮合によるポリマーの合成を行った。合成したポリマーは、熱可塑性を有するとともに、結晶性ポリマーであることを明らかにした。さらに、芳香環を含有するジアミンから新規なグルカル酸誘導体の合成にも成功した。NMR測定により生成物の化学構造を確認したところ、ラクトンを生成せずに重合反応が成功していることがわかった。また、これらのポリアミドは、良好な熱安定性を有することもわかった。これら一連の成果を学会で発表するとともに、論文投稿も行った。現在、グルカル酸とジアミンから重合されたポリマーを用い、グルカル酸単位を保護していたアセチル基を脱保護した後、新たに出現したフリーの水酸基にラクチドまたはカプロラクトンとの重合をさせるなど、優れたバイオベースポリマーの合成に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、グルコースから微生物発酵により生合成されるグルカル酸を原料として、新規で高性能なバイオベースプラスチックの研究開発に成功した。具体的には、グルカル酸の4つの水酸基をアセチル基で保護した後、芳香環を含有するジアミンとの重合により新規なバイオベースポリマーの合成に成功した。合成したポリマーは、熱可塑性を有し、フィルムなどにも成型加工可能であり、これらの成果について学会で発表するとともに、論文として投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成されたポリマーの4つの水酸基を脱保護する。そして、脱保護したポリマーのフリーの水酸基とラクチドまたはカプロラクトンと合成により新規な高分子量ネットワークポリマーまたは分岐状ポリマーの制御条件を検討する。続いて、フィルム作製や繊維化を行い、材料としての特性を評価する。さらに、作製したフィルムを活性汚泥中での分解試験や河川の水を用いた加水分解試験を行い、ポリマーの環境分解性を評価する。また、酵素での加水分解を評価する。時間ごとの重量減少、強度、分子鎖の構造や表面構造の変化を解析する。
|
Research Products
(3 results)