2017 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ卵巣体細胞のpiRNA生合成機構におけるYbタンパク質の機能解析
Project/Area Number |
17J04219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平形 樹生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | piRNA / Yb / Hel-C様ドメイン / Tudor-SNドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の生殖組織に特異的な小分子RNAであるpiRNAは、トランスポゾンの転移を抑制し、ゲノムの損傷を防いでいる。ショウジョウバエ卵巣の体細胞(OSC)におけるpiRNAの生合成には、RNAヘリカーゼドメインとTudor-SNドメインを持つタンパク質であるYbが必須である。YbのヘリカーゼドメインはRNAと結合し、piRNA生合成の場とされる細胞質顆粒Yb bodyの形成をもたらすことが知られている。一方、Tudor-SNドメインはタンパク質間相互作用やRNAの切断に関わると推測されるが、解析が進んでいない。そこで本研究では、ドメイン構造に着目してYbの機能解析を行った。 まず、RNA切断活性を解析するため、Ybタンパク質を精製してRNAとインキュベートしたが、RNAの切断は検出できなかった。次に、OSCを用いた免疫沈降法によりタンパク質間相互作用を解析したところ、YbがpiRNA生合成因子であるArmiおよびSoYbと結合すること、YbとSoYbの結合はArmiを介した間接的なものであること、Ybが自己会合することが明らかになった。 また、Tudor-SNドメインを欠失したYbをOSCに発現させて免疫沈降法を行ったところ、Armiとの結合にはYbのTudor-SNドメインが必要だが、自己会合には別の領域が関わっていることが示された。Ybは完全長のヘリカーゼドメインに加え、ヘリカーゼのC末端側半分のみ(Hel-C様ドメイン)をもう1つ持っている。そこで、Hel-C様ドメインを欠失したYbをOSCに発現させたところ、ArmiやRNAとの結合に影響はなかったが、自己会合が検出されず、Yb bodyの消失やトランスポゾンの脱抑制が認められた。これらの結果から、YbによるYb bodyの形成やトランスポゾンの抑制には、Hel-C様ドメインを介した自己会合が必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、トランスポゾンの抑制を担う小分子RNAの1つであるpiRNAの生合成に必須なタンパク質Ybの機能解析を目的としている。Ybは、Tudor-SNドメインと完全長のRNAヘリカーゼドメイン、および、ヘリカーゼドメインのC末端側半分のみからなるHel-C様ドメインを持ち、RNAと結合して細胞内で顆粒を形成することが知られている。本研究では、免疫沈降法による相互作用因子の探索とドメイン欠失変異体を用いた解析により、Tudor-SNドメインがpiRNA生合成因子であるArmiとの相互作用に、Hel-C様ドメインがYbの自己会合に必要であることが明らかになった。当初期待されていたYbのヌクレアーゼ活性は検出に至らなかったものの、Ybタンパク質の精製条件を確立できたため、タンパク質間相互作用やRNAとの結合について生化学的な解析を行うことが可能になった。また、Hel-C様ドメイン欠失変異体の解析により、Ybによるトランスポゾンの効果的な抑制には、YbとArmiやRNAとの結合のみならず、Ybの自己会合による顆粒形成が重要であるという新たな知見が得られた。完全長のRNAヘリカーゼドメインについては様々なタンパク質を用いて研究がなされているが、N末端側半分を欠失したHel-C様ドメインが単独で存在する場合の機能については知見が乏しく、YbのHel-C様ドメインが自己会合と顆粒形成を担うことを示したという点でも本研究の意義は大きい。以上を踏まえ、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、YbのTudor-SNドメインがArmiとの相互作用に、Hel-C様ドメインがYbの自己会合に必要であることがわかった。今後は、これらのドメインが各相互作用を行うに十分であるかを免疫沈降法によって検証していく。また、各ドメインを欠失したYbを発現させたOSCにおけるpiRNAの産生量や配列についても解析を行う予定である。 さらに、Ybタンパク質の精製条件を確立できたため、精製Ybタンパク質を用いた生化学的解析が可能となった。当初の予定通りヘリカーゼ活性の解析を行うとともに、本年度の研究で明らかになったタンパク質間相互作用についても解析を進める。精製Ybタンパク質の自己会合については、ブルーネイティブゲル電気泳動法による検出を目指す。
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Research Products
(5 results)