2017 Fiscal Year Annual Research Report
餌付け・人馴れが都市生物の攻撃性の上昇をもたらすのか?エゾリスを用いた実証研究
Project/Area Number |
17J04255
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 健太 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 都市生態学 / 人馴れ / 餌付け / 行動シンドローム / 個性 / 野生動物管理学 / 哺乳類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人馴れ・餌付けがエゾリスの人に対する攻撃性を高める可能性について検証することである。これまで、人に馴れたり餌付いた野生動物(例えば、北米イエローストーンのクマや奈良公園のシカ)が人に攻撃的になることが知られている。しかしながら、こうした人為介入がなぜ野生動物の人に対する攻撃性を高めるのかは、未だ科学的に検証されていない。そこで、本研究では過度な人馴れにより、同種に対する攻撃性が人に対する反応にも波及するという新しい枠組みを提示する。餌付けは、野生動物を誘引しエサ台などの局所的な個体密度を高める。こうした環境では、資源を巡る競争が激化し、個体の攻撃性が高まりやすいとされる。そして、こうした攻撃性はしばしば別の対象にも波及すること(漏洩効果Spillover effect)が知られる。つまり、過度の人馴れで全く人を恐れなくなった結果、リスの攻撃性の高まりが人への攻撃性にも波及していると考えた。本研究では、集団の攻撃行動の頻度、個体の同種に対する攻撃性の性格、個体の人への攻撃性を調べることで、上記の仮説を検証にする。
平成29年度は、データサンプリングを中心に行った。餌付けされている生息地では、餌付けのされていない生息地よりも、リス同士の争い合いの頻度が高いことが分かった。また、こうした生息地では、人に対する攻撃性も高いことが分かった。現在、約90頭のリスについて、Open field test(同種に対する攻撃性を測る行動実験)を実施しており、行動分析を行っている
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、一年で約50頭のリスの行動データを収集することができ、それ以前のデータと合わせると100頭を超えるリスの行動データが揃っている。また、Open field testについても8割を超える個体のビデオデータが解析を終了している。残り数地点で、さらにサンプリングをする必要があるが、統計解析などに必要な個体のデータはおおむね揃えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、フィールドでの追加のサンプリングを行う。さらに、残りのリスの同種に対する攻撃性の性格診断実験のデータを解析する。それをもとに、餌付けされ人に馴れた集団ほど、同種に対する攻撃性が高く、人にも攻撃的であることを明らかにする。また、リス科の性格診断実験を行っている海外の研究者に元に訪問して、統計的な部分でのアドバイスを頂くことにしている。
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