2017 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患における3型自然リンパ球と樹状細胞の機能解明
Project/Area Number |
17J04280
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅野 達雄 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 自然リンパ球 / 炎症性腸疾患 / 樹状細胞 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に則り、ILC3特異的にDll1を欠損している遺伝子改変マウスとしてRORγt Cre Dll1 floxed マウスを使用し解析した。1.DSS投与時の体重減少、死亡率の比較。2.フローサイトメトリーを用いた免疫関連細胞の定量的評価。3.腸管組織のサイトカインやIgA, IgG, IgM抗体のELISA法での定量的評価。4. 免疫染色による組織学的評価(特にcryptopatchやILF)。上記を実施した。ここまでの評価で遺伝子改変マウスと野生型マウスとの間に有意な差を認めなかった。並行して行っていた実験系でILC3特異的に遺伝子Xを欠損しているマウスにおいて、今回注目しているDll1の発現が低下していることが判明した。さらに驚くべきことにDll1のみならずLTi細胞に特異的なMHCIIやLTβなど他のタンパク質の発現も低下しており、Xを介したシグナルがLTi細胞特異的なタンパク質の発現に必須であることが予測された。そこで研究対象となるマウスをILC3特異的X欠損マウスとし、LTi細胞の分化や機能について腸管に限定せずに考える方針とした。ILC3特異的X欠損マウスについては腸間膜リンパ節のLTi細胞に対してRNA-seq解析を実施し、LTi細胞に特異的な遺伝子の発現の低下を認めた。ILC3特異的X欠損マウスでは便中のIgA coated Bacteriaの割合が多い傾向にあったため、既報にあるようにLTi細胞に発現しているMHCIIの低下によって腸炎惹起性の腸内細菌が増加している可能性を考え、サンプル数を増やし再現性を確認するとともに便中細菌のDNAのPCRを行い同定を試みている。XのリガンドであるサイトカインYは膜結合型と可溶型の両方の活性型を持つが、それぞれの役割を検索する必要があったため可溶型Yを選択的に欠損しているマウスを新たに作製し解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していたよりも幅広く研究成果が得られている。特にILC3におけるXを介したシグナルの重要性は今回の研究の要になると思われる。XのリガンドであるサイトカインYは膜結合型と可溶型の両方の活性型を持つが、それぞれの役割を検索する必要があったため可溶型Yを選択的に欠損しているマウスを新たに作製した。この新たに作製した可溶型Y欠損マウスは定常状態では検索する限りでは野生型と差がなかったが、興味深いことに、ある病態モデルにおいては病態の悪化を抑制するという結果が得られた。この結果は海外学術雑誌へ現在投稿中で、研究全体としても概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に加えて遺伝子改変マウスを2種類新規に用意して研究を進めており、データが積み重なるにつれ、腸管免疫や炎症性腸疾患に限定されない方向へ考察できるようになってきた。現在行っている炎症性腸疾患の実験モデルだけではなく、自己免疫性関節炎や腫瘍免疫に関係したモデルも組み立てて行く予定である。
|