2017 Fiscal Year Annual Research Report
自由民権運動期の「ドイツ学派」の再検討:独逸学協会から自治党運動へ
Project/Area Number |
17J04410
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
池田 真歩 首都大学東京, 社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 自治党 / 信用組合 / 独逸学協会 / 社会政策学会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基本的な関心は、明治維新以降の日本、とりわけ都市部において、経済格差をはじめとするさまざまな社会的緊張がどのように認識され、それがどのように同時代の政治のあり方を規定していったのかという点にある。その関心を追究する際の手がかりとして、早い時期から都市や都市住民に視線を向けたドイツ学派、および、彼らが少なからずかかわりをもった、商工業者の政治的組織化を目的のひとつとする自治党運動についての検討を、具体的な課題にすえた。初年度となる29年度の研究は、 (1)自由民権期の内務官僚・地方官の動向を跡づけること、(2)長い射程で(1)を位置づけるため、20世紀も視野に入れ社会的緊張および緊張への対応の実態をとらえること、を課題とした。 (1) 自由民権期の官僚・地方官に関する検討 明治初年のドイツ留学組の官僚として代表的な、品川弥二郎・平田東助について、公刊文書や憲政史料室所蔵の関係文書を中心に、上記観点から検討を進めた。また、滋賀県令・内務大丞・東京府知事を歴任し、品川らと密接な連携をとり続けた松田道之について、鳥取県において集中的に史料調査をおこなった。 (2) 都市経営・都市政策・都市社会政策に関する検討 明治期を代表する実業家であり社会事業家でもある渋沢栄一の動向に焦点をあてた。彼が東京における政策形成に、いかなる立場に身を置いていかに関わったかを、『渋沢栄一伝記資料』をはじめとした刊行物のほか、東京府公文書、東京商法会議所関係史料、『伝記資料』未収録の受信・発信書簡(渋沢栄一記念館所蔵)等の調査を通じて跡づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該期の都市政治・行政が置かれた環境、および東京という特定都市における、官僚層の問題意識・実業家の政治参与についての理解は確実に深まった。その一方で、ドイツ学派や自治党運動総体の描き直しに直結するような、諸主体の動向・認識についての史料収集・検討は予定よりも遅れており、先行研究を大きく超える知見を多くは得られていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、大別して以下の2つである。
(1) 自治党運動、あるいは明治中期の実業家の政治的組織化に関わる動向や言説について、個人文書や地方新聞・雑誌などを広く検討することを通じて跡づける。とりわけ東京・大阪という2つの大都市に焦点をあて、両都市の置かれた環境の異同にも注意をはらう。あわせて、日本の自治論における都市(住民≒商工業者)の位置づけ変化を追い、自治党運動の挫折と、自治論一般の重心変化のあいだの相互作用を明らかにする。
(2) 明治後期に「社会問題」・「社会政策」といった観念が前景化するなかで、行政機構・議会・住民中のいかなる勢力がいかにこうした観念に呼応したのか、またその過程で代議という政治手続きの機能やその機能に対する認識が、いかに変化したのかを、都市自治体を中心に考察する。蓄積の厚い明治社会主義をめぐる研究を系統的に理解したうえで、内務省・警察等の報告資料、各種社会政策論などを整理・検討する。
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Research Products
(4 results)