2017 Fiscal Year Annual Research Report
「民族の歴史」をめぐる闘争:社会主義期モンテネグロにおけるナショナリズムの展開
Project/Area Number |
17J04473
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中澤 拓哉 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | モンテネグロ / ユーゴスラヴィア / ナショナリズム / 歴史叙述 / 歴史教科書 / ニェゴシュ / 民族文化 / 正典化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は本研究において,社会主義期モンテネグロにおける民族政策の実相について研究を行うことで,社会主義期ユーゴスラヴィアにおける民族問題の解明に寄与することを目的としている。具体的には,社会主義期の学校教科書や知識人の言説,および同時期の文書館史料を分析することで,「モンテネグロ民族」という制度的枠組みがどのように利用・構築され,過去の事象がどのように解釈されてきたかを検討している。 研究の初年度である本年度は,主に学校教科書における民族史叙述とニェゴシュ廟建設問題の2点について研究を行い,先行研究で利用されてこなかったものも含む史料を調査し,社会主義期に「民族文化」を発展させるためにモンテネグロ政府が行った取り組みやツェティニェ市での議論について検討した。またその成果を,国際学会を含む複数の学会・シンポジウムで報告した。それらの報告内容の一部は,現在公刊すべく準備中である。また学術雑誌2誌に,研究会の参加記録や新刊紹介を掲載した。 上述の研究課題を遂行するために,2017年8月から9月にかけてツェティニェ(モンテネグロ),ポドゴリツァ(同),スコピエ(マケドニア)およびベオグラード(セルビア)に渡航し,それぞれに所在する文書館や図書館で史資料の収集を行った。2017年12月にはノヴィ・サド(同)とベオグラードに渡航し,上述の学会発表および文書館や図書館での調査を行った。またそれぞれの渡航時において,モンテネグロ史やユーゴスラヴィア史に関連する書籍を購入し,現地の研究者と議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2度の海外調査を行い,研究の基礎となる史資料を多く収集することができた。また研究成果を報告するための学会発表も3度行うことができた。成果の活字化についても現在進行中であり,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,およそ以下の点について研究を行い,その成果を学会報告などを通して発表していく。第1に,社会主義期におけるニェゴシュ像の政治利用である。ニェゴシュという国民的詩人がモンテネグロの言説および政策の中でどのように扱われてきたのかについて,現地での最新の研究動向を踏まえつつ検討したい。第2に,社会主義期の民族問題の背景となる第2次世界大戦以前の「モンテネグロ問題」について,主として公刊史料に依拠しつつ検討したい。また,本年度に行った学会報告の活字化にも注力したい。
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Research Products
(3 results)