2017 Fiscal Year Annual Research Report
患者由来iPS細胞を用いた顔面肩甲上腕型筋ジストロフィの病態解析
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17J04509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 充 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィ / 人工多能性幹細胞 / 酸化ストレス / 病態モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先天性筋疾患の一つである顔面肩甲上腕型筋ジストロフィ(FSHD)の筋委縮のメカニズムの解明と治療法の開発を目指すものである。FSHDは、4番染色体のゲノム構造の短縮か18番染色体上のSMCHD1遺伝子変異により発症することが知られているが、これらの遺伝学的背景から表現型として筋萎縮へ至るメカニズムは未解明である。FSHDは、非対称性の筋委縮などの特異な臨床像から、遺伝的要因(自発的要因)に加えて、エピジェネティックな発症要因(外的要因)が示唆されるが、その実態は不明である。本研究では、FSHDの発症メカニズムについて、患者iPS細胞とその遺伝子修復株に由来する分化骨格筋細胞を用い、患者細胞自身の特性の観点(自発的要因)、および細胞へのストレスの観点(外的要因)の両面から解析し、その知見を基に治療戦略・予防法を提案することを目的としている。本年度は、必要な全ての細胞株を各症例から作製し終え、骨格筋分化能を同等に有することを、形態・遺伝子発現・タンパク質発現の観点から評価し確認した。さらにそれらの細胞株由来の骨格筋細胞を用いることで、疾患特異的遺伝子発現が確かに起こっており、遺伝子修復細胞株を用いた実験からも、当該遺伝子発現が遺伝的背景と相関することを逆遺伝学的に示すことが出来たことから、FSHDのモデルとしての妥当性を確認した。さらに外的要因に関しての広範な実験的実証を行い仲介分子も同定することが出来た。上記の成果を複数の国内・国際学会にて発表し、国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載の一年目の内容のほとんどを完了することが出来た。また、一部の実験結果に関しては、当初の仮説を直接的に証明できない結果であったが、他方、別の観点からの実験を通し、結論の方向性は同じくして予想していなかった分子的背景を解明することが出来た。また、昨年度までに得られた成果をすでに国際誌に投稿した段階であり、この点は研究計画書に記載した次年度の予定に先んじている。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿中の研究成果について、査読者の指摘およびその回答を追加実験含め行い、出版公表を目指す予定である。また、さらに詳細な分子生物学的背景を種種の実験手法、とくにトランスクリプトーム解析などを利用して解明し、治療薬として潜在的有効性を有する標的を同定することを目指す。また、前年度に作製した遺伝子修復株を用いて、原遺伝子がコードするタンパク質と疾患特異的な遺伝子発現との関係を主にクロマチン構造の観点から解明することを目指す。
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Research Products
(6 results)