2017 Fiscal Year Annual Research Report
平和維持活動による「内生的平和」:紛争への参加動機と紛争再発防止に関する研究
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17J04618
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
淺野 塁 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 平和維持活動 / 内戦 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平和維持活動が内戦再発防止に寄与してきたのか、特に制度構築を担う文民部門の活動に焦点を当て、その効果の有無、および効果を与えうるメカニズムの検証を目的とした。初年度にあたる2017年度は、大きく2つの研究実施計画を立てていた。(1) 1つ目は、平和維持活動関連のデータを収集し、計量分析を通じてその効果の有無を検証すること、(2) 2つ目は、効果が発揮されるメカニズムを明らかにするために、理論モデルを構築することであった。
(1) に関しては、進捗が認められるものの、再分析の必要性が生じたことからその事前準備等に追加で時間を要した。その結果、(2) の進捗に影響を与え、2018年度に予算を繰り越すこととなった。具体的な進捗としては、国連平和維持活動の部門別支出額データを用いて計量分析を行い、文民部門支出額が増加するほど、内戦後平和期間が長期化する(内戦関連死者数が減少する)という分析結果を得た。当該分析に関する論文を、国際学会(MPSA、EPSA、PIPC)において研究発表したことが、2017年度の研究実績として挙げられる。研究発表にて得られたコメントに基づき、追加でデータを収集するとともに、別の分析モデルを用いて分析上の課題への挑戦も試みた。当該論文を学術雑誌に投稿するには至らなかったが、投稿に向けて論文を修正している。
(2) に関しては、具体的な研究実績に繋げることはできなかった。ただし、(1) を経て、今後取り組むべき課題を明らかにできた。その課題とは、平和維持活動をいつ、どこに派遣するかという、派遣する主体の意思決定プロセスとその傾向を明らかにすることである。同時に、平和維持活動の「効果」を考えるうえで、先行研究で語られてきた効果と、実務上の効果との差異に関しても、検討必要性を認識した。(2) を進める前段階として、以上2点を今後の研究の展開として位置付ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2017年度における研究進捗状況に関して、(1) 実証分析は、研究進捗が部分的であり、研究実績も学会発表にとどまったこと、(2) 理論モデル構築は、(1) の進捗状況に影響を受け、具体的な進捗に繋げることができなかったことから、「遅れている」と判断した。ただし、(1) に関しては、学会発表におけるコメントによって、修正すべき(追加で検証するべき)部分が明らかになり、論文修正を進めることができている。また、(2) に関しても、(1) の過程を通じて、理論モデルを構築する以前に取り組むべき課題が明らかになっている。以上の課題をクリアすることで、今後進捗状況を改善する。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度以降は、2017年度の研究進捗を踏まえて、大きく2つの推進方策にしたがい研究を進める。(1) 1つ目は、平和維持活動文民部門による内戦再発防止(内戦死者数減少)効果を検証する論文について、追加分析を含めて整理し直し、国際学術雑誌に投稿することである。(2) 2つ目は、平和維持活動がどのように内戦再発防止に寄与しうるのか、そのメカニズムを検討する前段階として新たに位置付けられた、以下2つの研究課題に取り組むことである。具体的には、(2-1) 平和維持活動の派遣プロセスを明らかにし、(2-2) 平和維持活動の「効果」がどのように検証されてきたのか、学術・実務両側面から調査することである。(2-1) については、既に検証に必要なデータは収集できているため、今後計量分析を進めるとともに、実際の決定過程を、国連等が発行している一次資料によって裏付けを行う。(2-2) については、当初の研究計画にも挙げていたインタビュー調査、および効果検証に関する一次資料を通じて、平和維持・平和構築に携わる実務者による評価方法を整理し、学術側の評価方法との比較を実施する。
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