2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pathogenic mechanisms of a new type of functional gastrointestinal disorder by dysfunction of CNP/NPR-B signaling
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17J04685
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曽川 千鶴 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | マウス消化管 / CNP/NPR-B / ENS / ICC / ヒルシュスプルング病類縁疾患 / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、C型ナトリウム利尿ペプチドの受容体NPR-Bに変異を持つShort-limed dwarfism (Npr2slw) マウス消化管の包括的な解析をおこなった。さらにラット抗NPR-B抗体の作成を試みた。 マウスの解析では、C57BL/6JJmsSlcへのコンジェニック系を解析に加えた。消化管神経系の発現量はウェスタン解析、ホールマウントおよび伸展ホールマウント免疫染色、パラフィン切片を用いたDAB染色をおこなった。薬理反応実験はマグヌスシステムにより直腸の自律運動を測定し薬剤添加時の反応を記録した。 ホールマウント染色では末梢神経系マーカーPGP9.5とICCマーカーCD117の抗体を用いて消化管を管状のまま免疫染色し撮像、画像をSIMシステムにより構築した。さらにそれを伸展しスライドグラスに貼り付けて拡大像を得た。パラフィン切片は横断面としPGP9.5に加えガングリオンマーカーHuC/D、腸管グリアマーカーSox10抗体を用いて全領域を免疫染色にて評価し、この3種の抗体はウェスタン解析にも使用した。薬理反応実験では、狭窄症状となった直腸全層断片にカリウム、カルバコール、ノルエピネフリンを添加した。 ラット抗NPR-B抗体の作成は、昨年度に作成したマウスNPR-B発現大腸菌を大量培養し、得られたリコンビナントタンパクをラットに免疫した。 本年度は昨年度と異なる方法で全体的な形態を把握するとともに、薬理反応やタンパク発現の側面から包括的に消化管の解析をおこなったことが意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLWマウスは、C57BL/6JJmsSlcへのコンジェニック系統 (B6-Npr2slw) を確立した。近交系 (Npr2slw) は兄妹交配により維持を続け、B6-Npr2slwとNpr2slwの交配によるF1の作出を開始した。SLWマウスの特徴である腸閉塞様症状は、Npr2slw、B6-Npr2slw、F1および交雑系F2に共通した表現型であるもののB6-Npr2slwのホモは生後2日以上生存せず、Nprslw、F1およびF2は後発的に発症し重篤な症状となることが多かった。また遺伝的背景を問わず0日齢ホモの消化管は既に粘質の気泡と胎便の異色を認め、胎齢期からの消化管異常が示唆された。PGP9.5、CD117抗体を用いたホールマウント免疫染色の結果、小腸の口側約半分は神経系が少なく生後の発達やその後の形態は小腸の口側と肛門側で異なり、結腸では腸間膜側と背側で形態が異なることを捉えた。ホモ小腸の口側はより未発達であったが、10日齢ホモ消化管では病態が発症しているにも関わらず神経系・ICCはいずれも形態的な発達をみせ狭窄部位も正常な形態を呈していた。しかし詳細に解析すると細く粗で特に輪走筋内ICCが目視上明らかに減少していることを突き止めた。横断面切片のHuC/D、Sox10、PGP9.5のDAB染色では決定的な大きな違いは無く、ウェスタン解析では発現量に有意な差を認めなかった。直腸の薬理反応実験では自律運動、 カリウム、カルバコール、ノルエピネフリンへの反応全てにおいてコントロールとホモの差異は見られなかった。 マウスNPR-Bリコンビナントタンパクはラットでは免疫反応を誘起せず抗体を得られなかった。 本年度の解析により、これまで狭窄と考えてきた部位は狭窄しておらず、膨張部位の異常に起因した症状である事が示唆され、これまでの自身の仮説を覆す大きな発見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
Npr2slwのホモ消化管および腸間膜の形態・血流状態を把握するため、血管造影剤を投与し小動物用マイクロCTによる非侵襲的イメージングを行う。さらにNPR-Bの欠損による遺伝子発現への影響や相互作用の変化を把握するためコントロールおよびホモ消化管のRNA-seq発現解析を行う。消化管は内容物を除去し全層ごと溶解しRNAを抽出する。 マウスNPR-Bの細胞内ドメインリコンビナントタンパクはウサギへの免疫を試みる。抗血清および、抗原またはIgA/Gによるアフィニティ精製を行ったウサギ抗NPR-Bポリクローナル抗体を得、免疫染色、競合試験、ウェスタン解析などによる評価を行う。 当初の研究計画で予定していたヒト患者の遺伝子解析は、昨今の倫理規定により個人情報の根本たる遺伝子情報の開示は困難となった。そのためヒト患者でのNPR2遺伝子の状態を把握することが不可能となり本件については医師側に一任することとなった。 最終的にNpr2slwの消化管に関する研究と、抗体作成に関する研究について論文としてまとめる。
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