2018 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・イスラームの国際連携:過激派に対峙する新思想家群
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17J04693
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
黒田 彩加 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 中東研究研究 / イスラーム思想研究 / 政治思想研究 / イスラーム主義 / エジプト / イスラーム政治思想 / イスラーム中道派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、研究成果の対外的な発信に重きをおいた一年であった。4月には、英国イスラーム学会にて、現代エジプトにおいて重要な穏健派イスラーム思想家であるターリク・ビシュリーに関する研究発表を実施し、学会参加者との意見交換を行った。その内容をもとにした学術論文を『日本中東学会年報』に投稿し、2019年2月に刊行された。 また、博士論文および採用第一年度の研究成果をもとにした書籍『イスラーム中道派の構想力――現代エジプトの社会・政治変動のなかで』の出版準備を年内に進め、2019年2月に刊行した。エジプトを主たる研究対象地域として、1980年代以降における「穏健派イスラーム」を代表する知識人集団の形成、同国の政教関係の発展、エジプトの社会政治変動とイスラーム主義の関わりについて、総合的に論じた著作である。 また、共同研究「アラブ世界における近代的メディアの形成――穏健主流派を中心に」の研究会に参加し、エジプトにおいて30年以上続いたイスラーム系雑誌である『現代のムスリム』誌に関する研究発表を行い、雑誌メディアを通じたアラブ・イスラーム世界における公共圏の形成と、エジプトにおけるイスラーム法学の発展について論じた。そこで得られた参加者からの意見を踏まえながら、2019年3月にカイロでフィールドワークを実施し、エジプトにおけるイスラーム系雑誌メディアと、穏健派イスラーム勢力の発展に関する文献・インタビュー調査を行った。 これらの研究発表と並行して、穏健派イスラーム知識人の反テロリズム言論、イスラーム法学論に関する文献の講読・調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の特筆すべき業績は、博士論文および採用第一年度の成果を元にした書籍である『イスラーム中道派の構想力――現代エジプトの社会・政治変動のなかで』を刊行したことある。現代エジプトにおける穏健派のイスラーム知識人集団の言論・社会活動に焦点をあて、イスラーム政治思想の現代的展開を明らかにした。アラブ・イスラーム諸国の政治・社会変動を分析するにあたって、思想的側面からアプローチした著作は、近年の中東研究では比較的めずらしいものである。 また、国際学会(英国イスラーム学会)で研究発表を行うとともに、日本の中東研究における主たる学術誌である『日本中東学会年報』に、エジプトの思想研究および政治―宗教関係に関する論文を投稿し、採録された。国内外での研究成果の発信も一定程度行うことができたことから、本年度の研究の進捗は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に行ったフィールドワークの成果をもとに、エジプトにおけるイスラーム改革運動の展開と公共圏の形成について、日本中東学会(5月)をはじめとする学会・研究集会や、一般書の分担執筆を通じて成果発表を行う。 また、前年度に引き続き、穏健派イスラーム思想家の反テロリズム言論・イスラーム法学論に関するアラビア語文献の講読を進める。これらの成果について、年度下半期に論文・研究ノートの投稿を行う。また、穏健派イスラーム思想家の国際的な活動に関するフィールドワーク(下半期)の実施にむけた準備をすすめる。 これらの活動と並行して、マレーシアや韓国の学会に参加し、研究者との意見交換を行う。
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Research Products
(4 results)