2018 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度台風-高潮結合アンサンブル予報システムの構築と検証
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17J04771
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
豊田 将也 岐阜大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 高解像度台風-高潮結合モデル / 高潮予報 / 進路予報誤差 / 最大風速半径 |
Outline of Annual Research Achievements |
高解像度台風-高潮結合アンサンブル予報システムの構築に向けて,2018年台風24号を対象とした進路アンサンブル予報実験を行った.気象庁は上陸直前の予報において「伊勢湾台風並みの記録的な高潮の恐れ」という最大級の警戒を呼びかけられたものの,名古屋港での最大潮位偏差は1.44 mに留まり(気象庁,2018),高潮予報は約1.7 mの過大予測となった.そこで本年度は,進路アンサンブル予報実験により名古屋港の潮位偏差が予報よりも大幅に低くなった要因を明らかにし,この事例に関する最悪の進路とその可能最大高潮を定量化することを目的として研究を進めた.まず,台風24号による台風気象場を高精度に再現するために,高解像度台風モデルを用いて再現実験を実施した.そして得られた台風気象場を外力として高潮モデルに入力することで高潮の再現実験(基準計算)を行い,さらに入力する初期気象場を南北に0.1度刻みにスライドさせることで,計30ケースの進路アンサンブル実験を実施した.伊勢湾および三河湾における全ケースの可能最大高潮の分布によると,名古屋港や衣浦港で2.2 mを超える潮位偏差となり,台風24号が最悪の進路をたどれば満潮と重なることで約3.2 mの高潮が発生していた可能性が示唆された.さらに最悪の進路での名古屋港における最大潮位偏差は2.31 mとなり(基準計算より0.83 m高い),全ケース中で最悪の高潮となった.台風24号の最大風速半径は基準計算で126 kmと伊勢湾台風(75 km)に比べてかなり大きく,この進路の時,名古屋港(台風中心から約120km)がちょうど最大風速域に位置することになるため,最大潮位偏差の極値となったと考えられる.気象庁による上陸前の予報では,実際の進路より北寄りに予報されており,この進路予報誤差に起因して高潮予報の過大評価となったことが考察できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は,高解像度台風モデルに対する初期値として使用する,海洋混合層厚さの高精度化を目標に,データ同化を用いた海洋混合層厚さ推定システムを構築した.そして台風強度予報を行い,その課題について確認した.本年度は,台風予報による高潮予報誤差の要因分析を主として行い,分析を行った.その結果,台風進路や台風強度の精度に加え,最大風速半径についても,高精度な予報が求められることが明らかとなった.この結果を今後の高解像度台風-高潮結合モデルに適用することで,高精度な高潮予報が可能になると期待される. また,台風予報の際に,初期設定として行う計算格子の最適化についても,シェルベースでの処理を行うことで,台風初期位置の情報から自動で計算開始まで実行されるシステムを構築した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,台風モデルの初期値の高精度化を図る.これまでに,海洋場の初期値の高精度化および,高解像度台風-高潮結合モデルは構築されているものの,強度予報の際に重要となる気象場の初期値の高精度化が達成されていないため,これを実装する.また,前年度に計算対象とした2018年台風24号に対して,ハインドキャスト実験を行い,初期場の高精度化による効果を評価する.
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