2017 Fiscal Year Annual Research Report
性選択か性的対立か:テナガショウジョウバエのユニークな求愛行動と交尾受容性の進化
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17J04813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
等 百合佳 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | イントログレッション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究の第一の目的であるメスの交尾受容性を制御する遺伝子座の同定のために,イントログレッション系統を作成した.当初はイントログレッション領域の詳細な断点を決定した後にこれらの系統のメスの交尾受容性を測定する予定であったが,系統の作成に使用する分子マーカーの設計に長期間を要したため当初の計画通りには研究は進まなかった. 分子マーカーというのは,親系統間でInDelがある部分の両端にプライマーを設計することで,増幅した断片を電気泳動にかけたときに断片長の違いから容易にどちらの親由来の配列を持っているかを判別出来るものである. 年度のはじめの段階ではこの分子マーカーの設計は親系統のコンティグ情報を比較することで容易におこなえると考えていた.しかし実際には,データの解釈を誤ったりそもそもコンティグにミスアセンブルが多かったりするなどの理由で難航した.この状況を改善するためキイロショウジョウバエやその他近縁種でも保存されている遺伝子の配列を使用したり,今回の研究には使用していない別系統の配列も併せて利用したりするなどの工夫によって,マーカーの設計に成功した. マーカーの設計に成功して以降のイントログレッション系統の作成は概ね当初の予定通りに遂行出来た.様々な箇所で組み換えの起こったイントログレッション系統を計14系統得ることが出来た.イントログレッション領域の断点を精査したところ,新しい系統では元のイントログレッション系統よりも更に領域が狭まりその範囲も多岐に渡ることが分かった.よって,これらの系統のメスの交尾受容性を測定することで候補領域が1Mb程度にまで狭められることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも触れたが,比較的簡単に設計出来ると考えていた分子マーカーの設計に難航したためである.これは,テナガショウジョウバエではコンティグ単位のドラフトゲノムが得られているもののその精度が十分に高くないことが原因と考えられる.テナガショウジョウバエでは3系統の全ゲノムが解読されているが,それらのアラインメント結果からもミスアセンブルが多いことが分かる.また,コンティグ間のつながりも分からない箇所が多い.キイロショウジョウバエの配列を参照してつなぎ合わせることは可能であるが,2種間では逆位が多数存在する可能性が示唆されており完全に参考にすることは出来ない状態である.
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Strategy for Future Research Activity |
イントログレッション系統の作成に成功したため,今後はこれらの系統のメスの交尾受容性を測定することで候補領域を絞り込む予定である.この絞り込みによって1Mb程度にまで狭められることが期待され,その領域には約200遺伝子が座乗していると予想される.これらのうち神経の発達や神経伝達に関わる遺伝子を洗い出し,遺伝子発現の抑制や過剰発現による行動の変化を測定したいと考えている.
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Research Products
(2 results)