2017 Fiscal Year Annual Research Report
都市の縮退に対応した景観形成手法に関する研究―縮退下の混在空間に着目して
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17J04936
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 嵩拓 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 都市公園 / 官民連携 / Park-PFI / 収益施設 / 生物多様性 / エゾリス / 帯広 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、縮退下の景観形成手法について議論するために、本年度は都市公園に着目し研究を行った。都市公園は”公開された空地”である事が、公共性の基底条件といえる。そのため、縮退後の都市を議論するうえで適切な対象と考えられる。また都市公園は近年、人口減少等を背景として管理費用削減や高水準サービスの導入が期待されている公共施設である。つまり、今後の在り方が模索されている段階である。そこで本研究では、「都市公園における民間事業者による収益施設の設置・管理実態について(①)、都市公園に住む生き物と人間の距離感が都市住民の生態系サービスに与える影響について(②)」という2つの研究課題に対して取組み、一定の成果を挙げている。その実施状況及び研究実績について以下に示す。 ①平成29年度に都市公園法が改正され、都市公園内で民間事業者による収益施設の設置・管理が全国的に促進される見通しを持つ。これを踏まえ、本改正以前から都市公園において収益施設設置に取組んでいた全国の事例に着目し、その動向を整理したものである。この研究について、アンケート調査やインタビュー調査が実施済であり、平成30年度中の論文投稿を予定している。 ②これまで都市環境は、生物にとって生息困難な環境と認識されていたものの、近年では都市環境をしたたかに利用する種(Urban exploiter)が数多く報告されている。特に我が国では人口減少が進行する中で、都市の空地を生き物の生息地として管理することの有用性について検証するものである。特に動物行動レベルで距離感の測定を行った点に、本研究の独自性がある。この研究について、学会での口頭発表1件(研究発表No.2)を行っており、平成30年度に追加の解析とアンケート調査を実施した後に国際誌への論文投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「人口減少下で都市公園に導入された官民連携手法の全国的な取組み実態(①)、官民連携による取組みのパターン化(②)、主体別の取組みが景観形成に与える影響(③)」に対して、一定の成果を挙げている。その対応関係について以下に示す。 ①研究対象とした都市公園における公募型の設置管理許可制度は、全国で19都市公園に導入されている事がわかった。これらの公募実施背景をアンケートで明らかにした結果、公募は魅力向上を目的として多くの自治体が運用しており、管理費用の逼迫や公園利用者の減少を背景に挙げる自治体は少なかった。 ②官民連携により設置された施設を、その業態別で分類した結果7種類が得られた。内5種類は施設を単独で設置しており、A.カフェ、B.レストラン、C.コンビニ、D.遊戯施設、E.その他である。一方で、一部の事業者は施設内に複数の飲食店やコンビニ等をテナントとして含んでおり、F.複合飲食施設、G.複合商業施設がみられた。 ③官民連携手法である公募型の設置管理では、行政と民間それぞれに異なる事業実施の背景がある。行政は公園の魅力向上へ向けて公募の要件を定めている一方、民間は立地条件の多寡によってその事業内容や施設配置計画が変化する事が明らかになった。 以上より、本研究の「研究の目的」の達成度は,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまで行ってきた都市公園に関する研究を発展させると同時に、都市公園を除く空地も含めて調査を実施する計画である。具体的には、我が国の大都市圏近郊に存在する都市農地を対象として扱う。都市の内は近年、その存続可能性が議論されており、特に2022年に生産緑地制度が失効期限を迎える事から、近年農地の利活用や土地利用転換が検討課題といえる。そこで、都市農地を対象とした景観の実態調査を行う事で、本研究が目的とする都市縮退下の景観実態解明を目指す。更に来年度は、世界第二位の高齢化率で、人口減少の先進地であるイタリアにて都市と農村を対象とする現地調査を行う事で、二国間の比較実施を検討する。
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Research Products
(2 results)