2017 Fiscal Year Annual Research Report
Long-range scattering, asymptotics at lattice width 0 for discrete Schrodinger operators
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17J05051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
只野 之英 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 離散シュレーディンガー作用素 / 六角格子 / 散乱理論 / 修正波動作用素 / 連続極限 / 正方格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散シュレーディンガー作用素は結晶格子内の電子の挙動を記述する方程式に現れる作用素であり,数学研究のみならず現象論においても非常に重要な作用素である.結晶格子の形で物性が変化することが知られているが,数学の文脈でも離散シュレーディンガー作用素は考える格子の形に依存し,作用素の性質が大きく異なってくることに現れている.特に六角格子は平面上に六角形状に原子が配置されたもので,グラフェンのモデルとされていることから応用上非常に興味がある対象である. 本年度は2つの研究課題に対して以下のような結果が得られた. ・離散シュレーディンガー作用素の長距離散乱理論を六角格子の場合に構築した.具体的には,2次元六角格子上の離散シュレーディンガー作用素に遠方で遅く減衰するポテンシャル(長距離型ポテンシャル)を摂動させたときに時間定常的な修正波動作用素を構成し,その存在と漸近完全性を証明した. ・格子の幅を0に近づけたときに,正方格子上の離散シュレーディンガー作用素がユークリッド空間上のシュレーディンガー作用素に近づくかを研究した.具体的には,正方格子とユークリッド空間の間に適当な対応付けを与えたとき,格子幅を考慮した正方格子上の離散シュレーディンガー作用素は強レゾルベントの意味でユークリッド空間上のシュレーディンガー作用素に収束することが証明できた.一方,ノルムレゾルベントの意味で収束することは示せなかったため,正方格子とユークリッド空間の間の対応付けでより良いものがないか引き続き研究する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
六角格子上の離散シュレーディンガー作用素の長距離散乱理論の結果が得られた一方で,結果を論文にまとめ学術雑誌に投稿する作業は翌年度に持ち越しとなった. 格子幅0での漸近解析の研究は,計画より早い段階で取り組めているため概ね良好である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き六角格子上の離散シュレーディンガー作用素の長距離散乱理論に関する結果を論文にまとめる作業を最優先で行う.その後は一般の格子の場合に対して拡張できないか検証する. 格子幅0での漸近解析に関しては,正方格子かつポテンシャルを摂動させない単純な場合においてノルムレゾルベント収束が言えないか研究をつづける.この場合に結果が得られ次第,ポテンシャルを摂動させた場合や他の格子の場合に同様の結果が得られないか検証する. 上記の2つの研究を進めつつ,得られた結果について研究集会で講演すると同時に,聴講者を含めた多くの研究者と議論を行い,研究の新たな知見,発想などを得る機会を設ける.
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