2017 Fiscal Year Annual Research Report
血中タンパク質AIMによる1型糖尿病抑制機構の解明と治療応用
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17J05083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松元 彩香 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 1型糖尿病 / AIM / NODマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病は、インスリンを産生する膵β細胞のTリンパ球による破壊を特徴とした自己免疫疾患であるが、その病態メカニズムは未だ不明な点が多い。膵島における死細胞除去の不全は自己免疫発症の原因と考えられるが、これまでの研究から、血中タンパク質AIMには、マクロファージなどによる死細胞除去を亢進させる機能があることが分かっている。また、1型糖尿病モデルであるNODマウスでAIMを欠損させると、糖尿病発症時期が早まる傾向が認められている。これらの事から、AIMには1型糖尿病抑制作用があるのではないか、という仮説を立てた。1型糖尿病に対するAIMの発症抑制効果について検討するため、まず野生型およびAIM欠損NODマウス、10、20週齢における膵島炎の状況を組織学的に解析した。膵島炎の程度を6段階で評価したが、有意な差は認められなかった。しかし、メスNODの90%が膵島炎を発症する20週齢以降の野生型、およびAIM欠損NODマウスについて血糖、尿糖、体重を週1回計測し、糖尿病の発症の時期・頻度を調べたところ、AIM欠損NODマウスにおいて、野生型NODマウスに比べて糖尿病発症時期が早まる傾向が認められた。さらに、AIMの投与により疾患の進行を制御できるかを検証するため、膵島炎が顕著になる前(3週齢)から組換えAIMを野生型NODマウスに毎週週2回投与して、15週齢における膵島炎の軽減の状況を膵島炎スコアリングにより検証した。その結果、PBS投与群に対してAIM投与群の方が有意に膵島炎のスコアが低く、リンパ球浸潤が顕著に抑制されていることがわかった。これによりAIMを投与することによる1型糖尿病の予防・治療という新しい疾患制御の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AIM欠損NODマウスの解析、さらに野生型NODマウスに対するAIMの継続投与により、AIMに1型糖尿病抑制作用があることが明らかとなった。AIMによる自己免疫抑制メカニズムの解明のため、膵島内マクロファージの貪食能に対するAIMの関与についても検討中であり、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、AIMによる自己免疫抑制メカニズムの解析を行う。特にAIMの死細胞除去促進機能に着目し、AIMが死んだ膵β細胞の除去を促進することで自己免疫の惹起を抑制しているのではないかという仮説のもと、in vitro phagocytosis assayや、特異的に膵β細胞を破壊するSTZ(steptozocin)を用いたマウスモデルで、AIM投与による死細胞除去促進効果の検討を行う予定である。
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