2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pluralistic Representation by the Upper House in Japan - the second chamber for interest groups -
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17J05103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高宮 秀典 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 参議院自民党 / 政策選好 / 候補者選定過程 / 郵政民営化 / インタビュー調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,まず修士論文の中核部分を投稿に向けて修正する。本研究は,従来,衆議院自民党との違いが明確でなかった参議院自民党の利益表出機能について,衆議院自民党との明確な差異を指摘したものである。 この修正作業と同時に,2つの研究に取り組んでいる。1つ目が,①参院選における自民党の候補者選定過程に関する研究であり,もう1つが,②郵政民営化法案に対する参議院自民党の造反行動を分析した研究である。 ①について詳細を説明する。政党の候補者選定過程を理解することは,政党の性格を把握する上で有用である。例えば,現在の自民党における「官邸支配」の原因を説明するには,小選挙区制下で候補者公認の権限を党執行部が握っていることが鍵となる。ここで,参院選の候補者選定過程は十分解明されていないのが現状である。そこで,本研究では,先行研究の蓄積が少ない参院選の候補者選定過程について,実態を明らかにすることを目指す。1980年代以降の情報は主に新聞記事から集め,それ以前については,新聞記事に加えて,参議院議員の回顧録などから情報を収集している。この回顧録は,これまで日本政治研究の分野で使用されてこなかった資料である。また,元参議院議員にインタビューも実施した。その過程で,新聞や回顧録では知り得なかった知見が得られたので,これらの発見を裏付ける定性的な情報も探索している。 ②は,参議院自民党と衆議院自民党の政策距離が政治過程に影響を及ぼす事例として,郵政民営化法案に対する参議院自民党の大量造反を分析したものである。衆議院自民党と対照的に,参議院自民党については,郵政法案への投票行動の先行研究が存在しない。新聞記事や回顧録,ブログなどから情報を収集したが,限界を感じたため,当時参議院議員だった人物を中心に取材を行った。現時点で,20人以上に話を聞くことができ,研究を大きく改善することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公刊論文という形では,研究成果は出版できていないが,現在取り組んでいる3つの研究が密接に関係しているため,3つ全てで一定の成果が上がったところで,連続的に投稿する予定である。修士論文の中核であった研究は,他の研究に取り組む中で,理論面や実証面で大きく改善することができている。 以下では,今年度に入ってから,集中的に取り組んだ 2つの研究(①参院選における自民党の候補者選定過程 ②郵政民営化法案に対する参議院自民党の投票行動の研究)について進捗状況を説明する。 ①については,政治家の回顧録を使用した情報収集で予想以上の収穫があった。まず,想定以上の文献数があり,また,各文献には予想以上に候補者選定過程の詳細が記されていた。ただし,回顧録を残している参議院議員は一部であるため,これらの情報だけから確定的な結論を出すことはできない。現在では,インタビューを組み合わせることで,これまで見落としていた擁立過程の形態があるかを探索している。また,現在の見立てが現場の観察と合致するかも確認している。 ②については,科研費申請当初,インタビューは補助的に行う予定だったが,数人に取材を行ったところで,新聞資料の間違いが指摘されるなど,望外の収穫があった。そのため,2018年の夏頃から大々的にインタビュー調査を行った。現時点で,郵政政局当時の参議院自民党議員の多くから話を聞くことができ,事例分析の質を劇的に改善することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,修論の中核であった参議院自民党と衆議院自民党の政策距離に関する研究を完成させ,これを学会誌に投稿する。次に,現在集中的に取り組んでいる2つの研究(①参院選における自民党の候補者選定過程の分析 ②郵政民営化法案に対する参議院自民党の造反行動の分析)を進める。以下では,この2つの研究について,今後の推進方策を説明する。 ①については,これまでのインタビューで得られた新しい知見を裏付ける資料を探すことが最初の課題である。特定の政治アクターの回顧録や県政史を読む予定である。また,他の都道府県でも同様の傾向があるかをインタビューによって確認する。さらに,特徴的な属性の候補者を擁立する都道府県で,参議院議員経験者にインタビュー調査を行い,同様の確認作業を繰り返す。また,これらの作業と同時に,県政に関する知識を幅広く習得するため,県政・県連史や有力県議などに関する文献を渉猟する。これらの作業を終え,内容にこれ以上改善の余地がないと判断されたときに学会誌に投稿する。本研究は,他の2つの研究と異なり,今後の参議院研究・政党組織研究・地方政治研究などで幅広く参照される「基礎研究」であるため,最終的な結論を早期に出すのではなく,十分な資料収集や裏付けを終えた後に投稿する予定である。 ②については,現時点で郵政民営化に反対した参議院議員へのインタビューがまだ完了していないので,新年度の早い段階で終わらせる。そして,2019年10月の日本政治学会でこの論文を発表し,そのコメントに基づいて,論文を修正し,学会誌に投稿する。
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Research Products
(3 results)