2017 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィル蛍光と光合成機能における季節変化メカニズムの解明
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17J05444
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻本 克斗 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | リモートセンシング / クロロフィル蛍光 / 環境応答 / PRI / キサントフィルサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、植物が育つ光環境の違いがクロロフィル蛍光・分光反射・光合成の環境応答に与える影響を中心に研究した。蛍光と反射分光指数PRIから、蛍光-光合成のモデルを使って異なる光条件で育った葉の光合成を推定しその精度を検証することを目的として、以下のような実験を行った。人工気象室内で強光・弱光の生育光条件を再現し、その中で一年生草本シロザを育成し、光強度・CO2濃度を変えながらクロロフィル蛍光・分光反射・ガス交換を同時に測定した。クロロフィル蛍光データからは蛍光収率を、分光反射からは熱放散の指標PRIを計算し、熱放散を推定した。そして蛍光モデルを用いて量子収率を求め、そこから光合成モデルで光合成速度を推定した。その結果、強光で育った葉は弱光で育った葉に比べ2倍から3倍の光合成能力があったが、PRIと蛍光を用いれば、葉の生育光環境にかかわらず高精度で光合成速度を推定することができることがわかった。 葉は、おかれた光環境に応じて光合成能力を変化させる(光順化)。植物群落内では、葉は様々な光環境に順化している。同時に、実際に群落で観測される太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)には、強い光を受ける群落上層だけでなく中・下層由来のものも含まれる。そのため、群落で観測したSIFからGPPを正確に推定するには、様々な光環境に順化した葉の蛍光と光合成の特性を個葉レベルで調べる必要がある。この結果は、SIFと反射分光を用いれば群落階層ごとに炭素吸収を推定できる可能性を示唆しており、大変意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、野外で育成した植物におけるクロロフィル蛍光と光合成の季節変化に着目している。しかし本年度は、野外での苗木の育成、およびその苗木を室内で測るための光合成測定系の立ち上げが順調に進まなかった。そのため、11月以降は育成チャンバー内で育てた草本植物を対象にした操作実験に切り替えることとした。本来観測するはずの、光合成機能の季節変化を測ることができなかったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
光順化に加えて貧栄養により光合成能力が低下した個体を作り出し、同様の実験を行うことで、クロロフィル蛍光とPRIを用いた光合成速度の推定適用範囲を調べる。また、2018年度は落葉広葉樹、常緑広葉樹、C3,C4光合成草本に対象種を増やし、さらに野外環境でその季節変化も観測する予定である。
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Research Products
(2 results)