2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J05498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川野 芽生 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ファンタジー / トールキン / ウィリアム・モリス / 中世主義 / 古英語 / 指輪物語 / ベーオウルフ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はウィリアム・モリスとトールキンを中心に、ファンタジー文学における同時代性と中世文学との接続について研究した。 中心となる業績としては、日本英文学会第89回全国大会での口頭発表「『指輪物語』のエントに見る過去と同時代の接続」が挙げられる。作中に登場する「エント」に焦点を当て、トールキンの『指輪物語』の丁寧なテクスト分析を行った。それにより、エントの体現している美徳が、過去の知恵を現代に活かすことであり、「時間」と「民主主義」という主題がエントにおいて深く結び付いていることを示した。また、エントに体現される上記の性質が作品全体に通底する主題であることを明らかにした。この口頭発表の内容について、日本英文学会『第89回大会Proceedings』において簡潔な報告を行った。また、口頭発表の内容に改訂を加えて論文とし、『英文学研究』に投稿した。論文は現在審査中である。 今年度発表された論文としては他に、「双方向の翻訳――ウィリアム・モリスの『ベーオウルフの物語』――」が挙げられる。この論文ではモリスによる『ベーオウルフ』の近代英語訳を通して、彼が中世文学をいかに理解し、摂取しているかを論じた。 いずれの研究も、中世主義を軸として、彼らが中世文学との対話を通して同時代に向き合い、みずからのファンタジー作品を著すに至ったかを解き明かすものであり、博士論文の一部となる予定である。 その他に、中英語・古英語を学び、特にモリスとトールキンの両人に影響を与えたマロリーの『アーサー王の死』について理解を深めるなど、研究の遂行に必要な学習を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会全国大会での口頭発表(査読あり)一回を行い、その内容に基づく投稿論文を執筆することができた。研究を深めつつ、適切にアウトプットを行うことができ、順調な進展だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに文献を収集しつつ、モリスおよびトールキンについて、特に同時代との関連に着目しながら研究を進める。その結果をまとめ、2019年度に行われる学会全国大会口頭発表に応募する。 文献収集、および研究対象への理解を深めるため、イギリスへの短期の滞在または留学を考えている。
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Research Products
(3 results)