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2017 Fiscal Year Annual Research Report

ベルクソン哲学の成り立ちと構造:『物質と記憶』を中心として

Research Project

Project/Area Number 17J05579
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

天野 恵美理  大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2017-04-26 – 2019-03-31
Keywordsベルクソン / 記憶 / 知覚 / イマージュ / 外界 / カント / 哲学史
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、アンリ・ベルクソンの第二主著『物質と記憶』の中心をなす、「イマージュ」という一見不明瞭かつ同書に独特な概念について、(1)この概念がどのような意図の下で導入されるに至ったかを明らかにし、(2)同書の論証構造の明確化を図ることによって、『物質と記憶』という著作の、他著作に還元されない独自性を示すことを試みるものである。今年度は(1)を中心に研究を進めた。
まず、『物質と記憶』に先立つ著作である『意識の直接与件についての試論』における関連事項を整理し、その上で『試論』から『物質と記憶』にかけてのベルクソンの思考の発展を、主客の関係という観点から跡付けた。以上の成果を、論文「ベルクソンにおける外界についての一考察―『意識の直接与件についての試論』から『物質と記憶』第四章にかけて―」にまとめた。
さらに、『物質と記憶』の出版直前期の講義録および同書に影響を与えた関連著作の概観を行った。これらの講義を、『試論』および『物質と記憶』という二つの著作と突き合わせることから、ベルクソンの「イマージュ」概念とは、デカルトやカントの議論、そしてトムソンやファラデーによる当時の最先端の物理学の成果を総合的に考察する過程において練り上げられていったものではないかという仮説が得られた。
上記の研究と並行して、前年度5月から8月まで、フランスに渡航し、ジャック・ドゥセ文書館(パリ)において資料調査をおこなった。ベルクソンの蔵書のうち、特にカントに関わるものについて閲覧し、ベルクソンが『純粋理性批判』のどの箇所を集中的に検討していたのかを確認した。
また前年度9月からは、今年度7月までの予定で、大学院指導委託制度を利用しパリ・カトリック学院のカミーユ・リキエ氏のもと在仏研究を行っており、『物質と記憶』執筆におけるカントの影響等について、リキエ氏と頻繁に意見交換を行っている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究の順調な進展を示すにあたり、以下の二点が具体的な成果として挙げられる。
(1)ベルクソン自身の思想の進展を跡付けるため、第一主著『意識の直接与件についての試論』と第二主著である『物質と記憶』とを比較し、「イマージュ」概念に関わる、両著作間の相違の明確化を図り、その成果を、論文「ベルクソンにおける外界についての一考察―『意識の直接与件についての試論』から『物質と記憶』第四章にかけて―」として公表した。
(2)大学院指導委託制度を利用し、当該年度の後半から1年間の予定でベルクソン研究の第一人者であるカミーユ・リキエ氏(パリ・カトリック学院・准教授)のもと在仏研究をしており、渡航以来、継続的に同氏と有益な意見交換が出来ている。またリキエ氏の他にも、学会等の機会をも活用してフランス本国の多数のベルクソン研究者たちと積極的に議論を交わすことが出来た。加えて、文書館所蔵のベルクソンの蔵書への欄外書き込み・メモ等の関連資料の調査・整理が順調に進んだ。

Strategy for Future Research Activity

前年度の研究により、ベルクソンの「イマージュ」概念とは、デカルトやカントの議論、そしてトムソンやファラデーによる当時の最先端の物理学の成果を総合的に考察する過程において練り上げられていったものではないかという仮説が得られた。そこでまず、上記の当時の物理学に対するベルクソンの態度の変遷を追いつつ、当時の物理学が特に「イマージュ」概念の形成に及ぼした影響について整理し、成果を論文としてまとめる。
また、講義録や、前年度にジャック・ドゥセ文書館で調査した資料も用いつつ、『物質と記憶』執筆におけるカントの影響についても整理し、リキエ氏との議論を深めた上で成果を論文にまとめる。なお、「イマージュ」概念は同書のとりわけ第一章に主題的に現れるが、リキエ氏は、「イマージュ」概念も含め第一章が最後に書かれた章であるという主張をしており、その上で、この著作が一冊の書物として成立するに際して、カント理解の深化が決定的な役割を果たしていると主張している。ベルクソンとカントの比較研究は数多あるが、『物質と記憶』におけるカントのポジティヴかつ決定的な影響を主張する研究者はベルクソン研究史を通じてもリキエ氏を措いておらず、自身の研究にとって氏の主張は大変注目すべきものである。それゆえ今後もカントの影響について氏と議論を深める予定である。さらに今年、未公開資料であった、カントについて言及した講義が出版予定であるので、当講義についてもリキエ氏と意見交換をしその成果も論文に活かしたい。
以上の研究を踏まえて最終的に、「研究実績の概要」欄に(2)として述べた『物質と記憶』の論証構造の明確化について、同書を「イマージュ」概念を中心として成立する書物と捉え直すことで同書の論証構造の明確化を図り、『創造的進化』をはじめとする他著作に還元されない同書の独自性を示す。その成果は論文ないし口頭発表として公表する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] ベルクソンにおける外界についての一考察―『意識の直接与件についての試論』から『物質と記憶』第四章にかけて―2017

    • Author(s)
      天野恵美理
    • Journal Title

      待兼山論叢

      Volume: 51 Pages: 37-52

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2018-12-17  

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