2017 Fiscal Year Annual Research Report
側根形成時に細胞分裂の制限に働くミトコンドリアmRNA転写後制御ネットワーク
Project/Area Number |
17J05722
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
間宮 章仁 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 側根形成 / ミトコンドリア / RNA編集 / ポリA代謝 / 器官形成 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高温下での細胞分裂過剰による帯化側根形成を特徴とするシロイヌナズナの温度感受性変異体rrd1、rrd2、rid4(TDF変異体)の原因遺伝子が、いずれもミトコンドリアmRNA(mt-mRNA)の転写後制御に関わると推定されるタンパク質をコードしていたことに着目し、これらの解析を通して、ミトコンドリアの役割を基軸に、植物の器官形成開始時における細胞分裂の調節機構を解き明かそうとするものである。平成29年度は、mt-mRNAの転写後制御に関し、RRD2がmt-mRNAの特定部位の編集に関与することを明らかにしたほか、mt-mRNAのポリA不可、ポリA分解、編集の異常が表現型に与える相乗的ないし拮抗的作用を二重変異体の利用により遺伝学的に検討し、いくつかの興味深い結果を得た。また、mt-mRNAのRNA-seqによる包括的解析に向けて、シロイヌナズナ各変異体のカルスから大量のミトコンドリアを調製する方法を確立した。この調整方法を利用して、ミトコンドリアの生化学的な解析を行い、酸素電極を用いた呼吸活性測定技術の習得にも取り組んだ。また、過去のトランスクリプトームデータの再解析や、薬理学的解析などからもミトコンドリア機能不全による帯化側根形成の仕組みの解明の糸口となり得る新たな知見を得た。さらに国際集会でも研究を発表し、多くの研究者と意見交換を行ったほか、そこで得た情報を元に光シート顕微鏡を用いたライブイメージングを新たに研究計画に加えた。国外ラボへの短期留学を通して、観察技術の習得および側根形成初期過程の予備的イメージングも行い、TDF変異体の側根形成時における細胞分裂調節に関して重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
残念ながら本年度に計画していたmt-mRNAに関するポリソーム解析やRNA-seq解析の実施は、そのためのミトコンドリア調製法の改良に時間を要したため、年度内に間に合わなかった。しかし、負担の大きかった過程を大幅に効率化できたため、今後大きな進捗が期待できる。確立されたミトコンドリア調製法はmt-mRNAの解析だけでなく、様々な生化学的解析にも有用であり、方法の改良に時間をかけた価値は十分にあったと考えている。また、その間にRRD2の標的編集部位を同定し、RNA編集とポリA代謝の相互関係についても興味深い知見を得て、mt-mRNA転写後制御に関する解析の着眼点をより明確にすることができた。これらのことから、植物におけるmt-mRNA転写後制御の全体像や相互関係、意義を明らかにするという本研究の大きな目的の一つを果たす上で必要な研究の基盤の整備ができたと考えている。分子マーカーを用いた側根形成過程の観察に関しては、光シート顕微鏡を用いたライブイメージングを研究計画に加え、国外のラボの協力の元、観察技術の習得、解析のための実験条件の検討、観察に適した分子マーカーの選定などを行うことに成功し、順調に進めることができたと考えている。以上のことから、一部未達成の計画はあったものの、計画外の進展もあり、全体として概ね期待通りの成果を上げたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度(以下、昨年度)におけるmt-mRNA関連の二重変異体の解析から、植物ミトコンドリアにおけるポリA代謝の意義の理解を深める上で鍵となりうる興味深い知見が得られた。昨年度に予定していたTDF変異体のmt-mRNAやミトコンドリア機能に関する解析を今後、これらの二重変異体を含めて実施することで、mt-mRNAポリA状態とミトコンドリア機能の関連を明らかにしたいと考えている。また、これらの二重変異体は側根形成の解析にも有用であることがわかってきた。平成30年度以降に予定していた側根形成過程のトランスクリプトーム解析をこれらにも適用し、ミトコンドリア機能のわずかな違いによって側根形成に異なる影響がみられることに注目して、帯化側根形成の分子メカニズムに迫りたいと考えている。 さらに、昨年度行った薬理学的解析から、全ての種類のミトコンドリア不全が側根形成時の過剰な細胞分裂を引き起こすわけではないことが示唆された。薬理学的解析と昨年度習得した光シート顕微鏡によるライブイメージング解析を組み合わせ、薬剤の効果を分子マーカーによって詳細に評価することで、ミトコンドリア機能不全のどういった側面が側根形成時の細胞分裂にどのように影響を与えるのか、詳細に調べる予定である。
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[Presentation] シロイヌナズナの側根形成初期過程において高温下で過剰な細胞分裂をもたらすミトコンドリア異常の解析2017
Author(s)
間宮章仁, 大塚蔵嵩, 野崎 守, 山本 荷葉子, 小林 健人, 八木 祐介, 中村崇裕, 平山 隆志, 上田 貴志, 蜂谷 卓士, 野口 航, 杉山 宗隆
Organizer
日本植物学会第81回大会
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[Presentation] シロイヌナズナの側根原基形成における非対称細胞分裂の終結制御とミトコンドリア機能および温度との関係2017
Author(s)
間宮章仁, 大塚蔵嵩, 野崎守, 山本荷葉子, 小林健人, 八木祐介, 中村崇裕, 平山隆志, 上田貴志, 蜂谷卓士, 野口航, 杉山宗隆
Organizer
Biothermology Workshop 2017