2018 Fiscal Year Annual Research Report
側根形成時に細胞分裂の制限に働くミトコンドリアmRNA転写後制御ネットワーク
Project/Area Number |
17J05722
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
間宮 章仁 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 植物 / 発生 / ミトコンドリア / RNA編集 / ポリA / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高温下での細胞分裂過剰による帯化側根形成を特徴とするシロイヌナズナの温度感受性変異体rrd1、rrd2、rid4(TDF変異体)の原因遺伝子が、いずれもミトコンドリアmRNA(mt-mRNA)の転写後制御に関わると推定されるタンパク質をコードしていたことに着目し、これらの解析を通して、ミトコンドリアの役割を基軸に、植物の器官形成開始時における細胞分裂の調節機構を解き明かそうとするものである。平成30年度は、mt-mRNAの編集の解析を完了させ、RRD2とRID4が関わる編集部位の全てを特定した。また、前年度に確立したミトコンドリア調整法を利用したミトコンドリアタンパク質の解析も行って、RRD2はccb2とccb3のmRNA編集を通してシトクロムcの成熟に、RID4はatp4 mRNAの編集を介してATP合成酵素複合体の形成に、それぞれ関与することを明らかにした。さらに、薬理学的解析により、呼吸鎖の機能不全がもたらす活性酸素種(ROS)生成が側根原基の細胞分裂過剰を引き起こす可能性を示し、過去のトランスクリプトームデータの再解析結果や前年度の光シート顕微鏡を用いたライブイメージングの結果と照合することで、ミトコンドリア機能不全による帯化側根形成のメカニズムの推定を行った。この他、mt-mRNAのポリA付加と編集の関係、TDF変異体の温度感受性の原因などについて、新たな手掛かりを得た。mt-mRNAの次世代シーケンス(NGS)解析については、計画を見直した上で、準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度実施予定だったmt-mRNAの次世代シーケンス(NGS)解析は、計画の見直しやライブラリー調製方法の最適化に時間を要したため、準備は進んだものの残念ながら実施はできなかった。バクテリアRNAの最新の研究などから、植物ミトコンドリアにおけるポリA 分解の意義を明らかにするためには、mRNAだけでなく、tRNAも含めた、より包括的な解析が必要であることが判明したこと、mt-RNA 3’末端解析法の試料調製の効率の改善の必要性や、ライブラリー中のrRNA由来の配列の低減などによるコスト削減の必要性が判明したことが具体的な理由として挙げられる。現在、海外研究者の協力の元、3’末端解析法の改良やtRNAの解析、rRNA削減などについて知見を得て、ライブラリー調製の最適化を行っている段階であり、概ね見通しは立ったと考えている。一方、薬理学的解析から重要な示唆が得られたとともに、ミトコンドリアタンパク質の生化学的解析やmt-mRNAのポリA付加と編集の関係についての遺伝的解析についても順調に進んだ。以上のことから、一部計画の遅延が見られるものの、想定外の成果もあり、全体として概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成31年度/令和元年度は、mt-mRNAのNGS解析(3’ TAIL-seq、RNA-seq、3’ hydro-tRNA-seq、polysome 3’ RACE-seq)を実施し、TDF変異体および、各種二重変異体を用いて、植物ミトコンドリアRNAのポリA付加の意義と、RNA編集との関連を明らかにすることを目指す。また、これまでに推定されたミトコンドリア機能不全による帯化側根形成のメカニズムを、さらなる薬理学的解析や遺伝的解析によって検証する。
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