2018 Fiscal Year Annual Research Report
Replicative Strecker amino acids synthesis using proposed origins of chirality such as quartz and circularly polarized light
Project/Area Number |
17J06244
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
會場 翔平 福井大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉の起源 / ストレッカー反応 / アミノ酸 / 自己複製 / 不斉誘起 / 不斉増幅 / 自発的絶対不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命のホモキラリティを解明することは、生命誕生について検証する鍵を握るとされており、学術的に極めて重要である。そこで前生物的アミノ酸合成反応とされるストレッカー反応において中間体アミノニトリルに着目したキラルアミノ酸の自発的絶対不斉合成および自己複製プロセスについて明らかにした。 コングロメレートを形成するo-トリルグリシンニトリルを用いた自発的絶対不斉合成と温度サイクルによる不斉増幅を報告している。そこで、アミノニトリルを加水分解して得られるo-トリルグリシンを不斉源としたストレッカー反応によって中間体アミノニトリルを合成した。得られたアミノニトリルを温度サイクルによって不斉増幅したところ、アミノ酸の絶対配置に対応したアミノニトリルが得られることが見出された。即ち、L-アミノ酸を不斉源にすると、L-アミノニトリルが得られた一方で、D-アミノ酸存在下においてはD-アミノニトリルが生成した。得られたアミノニトリルを加水分解すると、不斉源と同一構造および同一絶対配置のアミノ酸が得られることからアミノ酸がストレッカー反応において自己複製するプロセスを実現した。 水混合溶媒中におけるストレッカー反応の進行に伴うアミノニトリルの結晶化によって、高鏡像体過剰率の固体が自発的に得られることを見出した。即ち、コングロメレートを形成するp-トリルグリシンニトリルを用いて水/メタノール混合溶媒中でストレッカー反応を行い、結晶を析出させると高鏡像体過剰率のアミノニトリルが得られた。得られたアミノニトリルの絶対配置は23回の実験のうち、L体が12回、D体が11回であり、統計的分布に従っているため自発的絶対不斉合成の必要条件を満たしている。さらに、その鏡像体過剰率は23回の実験のうち、15回が98% ee以上であり、高鏡像体過剰率であることが本結果の特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
o-トリルグリシンの不斉自己複製プロセスをアミノニトリルのコングロメレート形成と温度サイクルによる不斉増幅を組み合わせることによって実現した。また、水混合溶媒中におけるストレッカー反応における高エナンチオ選択的な自発的絶対不斉合成を達成した。以上の成果から当初の計画通りに研究が進捗していると考えられる。 自己複製は生命固有の特質であり、前生物的環境下においてアミノ酸が自己複製したプロセスを検証することは、ホモキラリティを検証する上で極めて意義深いと言える。今回見出した自己複製プロセスは、アミノ酸が自身の中間体を不斉誘起する非常に興味深い結果であり、不斉の起源の解明につながる成果であると考えている。 水混合溶媒を用いたストレッカー反応において、高鏡像体過剰率のアミノニトリルがアキラルな環境下から自発的に生成することを見出した。水は地球上に多く存在するため、不斉の起源を検証する上で欠かすことのできない溶媒である。メタノール溶媒中の実験と比較すると、水混合溶媒を用いた実験ではアミノ酸中間体が高エナンチオ選択的に得られることが判明した。水を用いたことで本結果が得られたことから不斉の起源と水の関連を検証する上で極めて興味深い知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、アミノ酸の不斉自己複製プロセスについて検証を行なう。新たにコングロメレートを形成するアミノニトリルを見出し、対応するアミノ酸を不斉源とすることでアミノニトリルの不斉誘起実験を検討する。また、アミノ酸が不斉源として作用するメカニズムについて検証を行ない、自己複製の必然性について研究を行いたいと考えている。 さらに、水晶および円偏光を不斉源としたストレッカー反応についても研究を続ける。水晶をストレッカー反応中に加えることで反応が促進され、アミノニトリルが得られることを見出している。不斉源として作用する上で水晶表面において反応が進行することが重要であるため、水晶の粉砕方法や表面処理についての検証を行う。左右の水晶を不斉源にアミノニトリルをエナンチオ選択的に得ることを目的とする。一方で円偏光照射下のストレッカー反応において、円偏光のらせん方向によってアミノニトリルの絶対配置の制御を目的に研究を行う。アミノニトリルのエナンチオマー間に吸光度の差があることを利用し、左または右円偏光を照射することでアミノニトリルを不斉誘起させる。円偏光照射と温度サイクルによる不斉増幅を組み合わせることで、高鏡像体過剰率のアミノニトリルが得られることを見出しており、引き続き立体相関性について検証を行なう。
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