2017 Fiscal Year Annual Research Report
不飽和土のミクロ構造変化の解明とマクロな強度評価方法の確立
Project/Area Number |
17J06250
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木戸 隆之祐 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 不飽和土 / 三軸圧縮試験 / X線CT / CT画像解析 / ミクロ構造 / マクロな力学挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,不飽和土のミクロ構造変化の解明に主眼を置き研究に取り組んだ.具体的には,粒度調整した珪砂を使用した排気-排水,非排水条件不飽和砂三軸圧縮試験ならびにX線CT撮影を実施し,データの蓄積を行った.これらと並行して,本研究の核となるCT画像解析手法の確立を目指し,手法の提案から実装,妥当性の検証まで取り組んだ. 実験に関しては,当初は初期飽和度を数パターンに変える予定だったが,供試体の不飽和化に想定より時間を要したため2パターンに留まった.しかし,排水条件や初期飽和度が異なる場合の不飽和砂の応力レベルの差異等を確認でき,目的は概ね達成できたと考える. 画像解析に関しては,計画以上に進捗した.当初は,水の曲率解析と土粒子の接触点解析の確立を目標とした.前者は,当初予定していた曲率が既知のガラスビーズを用いる方法ではなく,数値計算で仮想的な真球画像を作成し曲率解析を適用した結果,物体の曲率を議論する手法として妥当なことがわかった.後者は,既知の接触点数,粒子の配位数を持つ仮想的な球充填構造を対象に解析を行った.その結果,既知の量と解析結果が調和し,接触点を評価する手法の妥当性を確認した.一方,変形前後の画像から変位場を測定する画像相関法の解析精度を向上する補正アルゴリズムや,土粒子間1つ1つの間隙を抽出しポアスケールの含水量分布を評価する画像解析手法の確立も並行して取り組み,手法の構想から妥当性の検証まで完了した. これらの成果の一部は学術雑誌や多数の国際会議で発表した.これまで知り得なかった不飽和土の特性をミクロな視点から詳らかにした上,マクロな力学挙動との関係性に言及した点は当該分野の発展に寄与する学術的意義のある知見と考える.新たに提案した画像解析手法を保水状態や密度分布が異なる土の画像に適用すれば,水分特性の変化や密度依存性についてさらなる成果が見込める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,不飽和土のミクロ構造変化の解明と,マクロな強度評価方法の確立である.以下,現在までの進捗状況を示す. 後者のマクロな強度評価方法の確立では,実現場で使用される土を対象に三軸圧縮試験を実施し,強度・変形特性を調べる.H29年度のうちに本試験まで数ケース実施することを想定していたが,実施には至らなかった.しかしながら,実験条件の決定と予備実験は終えており,実験を重ねデータを蓄積していくことで最終目的は達成できると考える. 前者のミクロ構造変化の解明では,実験データの蓄積と画像解析手法の確立を軸に研究を遂行した.実験に関しては,排気-排水条件,非排水条件をベースに,試験体の初期飽和度を様々なパターンで変えて実験データを蓄積する予定だったが,不飽和化に想定より時間を要したため2パターンのみに留まった.しかしながら,排水条件や初期飽和度が異なる場合の不飽和砂の応力レベルの差異等を確認でき,目的は概ね達成できたと考える. 画像解析に関しては,計画以上に進捗した.当初は,水の曲率解析と土粒子の接触点解析の確立を目標とした.前者は,当初予定していた曲率が既知のガラスビーズを用いる方法ではなく,数値計算で仮想的な真球画像を作成し曲率解析を適用した結果,物体の曲率を議論する手法として妥当なことがわかった.後者は,既知の接触点数,粒子の配位数を持つ仮想的な球充填構造を対象に解析を行った.その結果,既知の量と解析結果が調和し,接触点を評価する手法の妥当性を確認した.一方,変形前後の画像から変位場を測定する画像相関法の解析精度を向上する補正アルゴリズムや,土粒子間1つ1つの間隙を抽出しポアスケールの含水量分布を評価する画像解析手法の確立も並行して取り組み,手法の構想から妥当性の検証まで完了した. 以上が現在までの進捗状況であり,計画以上の成果が得られたと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で,当初予定していた排水条件,非排水条件における不飽和砂のミクロ構造変化の違いは明らかにすることができた.今後は,実際の盛土や堤防に用いられる土を対象に同様の条件で三軸圧縮試験を行い,強度評価をしていく. 実験試料は,堤防の改修に用いられ,本研究機関でも実験データがある程度蓄積されている淀川堤防砂を使用する.サクションの制御方法は,水頭型吸引法ではなく,空気圧と水圧を両方与えるAxis translation法を採用し,より大きなサクションを供試体に与えて強度評価を行う.排水,非排水条件の三軸圧縮試験において,与えるサクションを数パターン変えることで,巨視的なサクションおよび排水条件の違いがマクロな強度変化に及ぼす影響について検討する.変形中の体積変化については,これまで通りX線CTを用いた精緻な計測を行う. 淀川堤防砂を用いた三軸圧縮試験を実施することで,強度変化,体積変化,せん断強度および破壊基準が明らかとなる.これらのマクロな力学挙動に対して,珪砂を対象に得られたミクロ構造変化がどのような効果を発揮し,寄与しているのかを考察する.これにより,マクロな挙動とミクロな挙動のリンクが明白となり,各排水条件およびサクション下における強度発現メカニズムに物理的背景が与えられる.これにより,堤防や盛土等の強度評価を行う際,どのような条件を採用して試験を実施するかの基準を明確にしていく.博士論文では,これらの内容をまとめ,学術雑誌にも投稿することを計画している. 当初は従来の土の破壊基準にミクロな特性から得られるパラメータを導入し,新たな破壊基準を定義することを予定していた.しかし,現存する手法とデータが不足し,より長期的な研究が必要になると判断したため,ミクロな特性をマクロな物理量へ変換することは断念した.マクロな挙動をミクロな特性の解明で裏付けることをめざす.
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Research Products
(10 results)